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ラビットプレス+8月号


だいたい何処も同じような形はどうして?(イメージ:千葉市少年の家)

 7月に入って新型コロナウイルス感染症の感染拡大は次の局面に移ったかも知れない。東京都の場合、5月29日の緊急事態宣言解除以降、新規陽性者の発現数は順調に減数し、あわよくばこのまま終息に向かってくれるのではと期待したのも束の間、6月下旬ごろより陽性者数が増加に転じ、7月2日にはまた三桁に戻った。折しも梅雨の真っ只中。ウイルスの好む湿度と気温が感染の蔓延を助長しながら、このまま第二波に向かうのか。
 今般のコロナ禍にあって、社会が大きく変化した。ある種日本型の企業経営形態でるメンバーシップ型雇用形態が見事に覆されたのだ。つまり、働き場所を企業の社屋に固定し、9時~5時&週5日フルタイムが基本の就業形態が3密回避を大義とする在宅勤務推奨に大きくシフトしたことである。テレワークやリモートワークなどと呼ばれる勤務形態が、様々な企業、行政、団体で採用され、人との接触を極力避けるというビジネスセオリーの正反対ともいえる方法が脚光を浴びている。
 本来、テレワークは組織のコスト削減のために利用することもある(社員はオフィスや作業場を必要とせず、事務所を借りたり購入したりする必要も無くなる。当然、光熱費などのコストも削減できる)。テレワークを導入することで、通勤時間や渋滞など、時間的なコストを減らすことができるため、社員の生活の質の向上に寄与する。更に、テレワークの導入で、仕事の責任と私生活や家族内の役割(子供の養育や高齢両親の介護など)を認識することで、公私のバランスを取りやすくなり、通勤渋滞による大気汚染を軽減し、交通事故も減らすことができるため、社会貢献としてテレワークを採用している組織も出てきているほどである。
 そう書けば、良いこと尽くしのテレワークなのに、どんどん導入を促進し、それこそ政府の言う「働き方改革」の心柱として行けば良いと思うのだが、この数か月間、在宅勤務によって家庭内に不穏な空気が漂い、危機的な状況を迎えている夫婦や家族も増大している。理由は様々であるが、そもそも日本の家庭内環境におけるハード面やソフト面が在宅型テレワークに適していないという現実がある。


テレワークに必要な環境を整備することとは?(イメージ:日本テレワーク協会)

 本編では、その解決の一助となるかも知れない従来から存在する住宅スタイルの中で、「ログハウス」を取り上げる。これをお読み頂ければ、あなたもログハウスの生活を始めてみたくなること請け合いである。

【ログハウスとは】
 ログハウス(Log House:英)は、木材の原木(丸太=log)にノッチ(notch=切り込み)を施し、丸太を交互に組み上げていく構法の建築物の総称である。
 構造としては、柱と壁が組まれた丸太で構成されるシンプル且つ合理的な丸太組構法や、日本の在来工法に似た、柱と梁に丸太を使用した軸組構法(post and beam)、軸組構法の壁部分に短い丸太材を落とし込んで壁材とするピーセンピース(piece-en-piece)構法などが知られている。ログハウスの基本は丸太を使用することだが、製材した角材も利用する。また、使用する木材の種類に明確な基準はなく、世界各国各地域で古くから地域材を利用した簡易な建築物として親しまれてきた歴史がある。ログハウスの特徴としては、100%木造故の湿度調整の優位性と木の断熱性の高さから、夏場は涼しく冬は温かいことが挙げられる。


製材されたログ(イメージ:建築とちぎ)

 ログハウスの歴史は、前述の通り世界各地の木造建築物に由来するため、確たる建築様式としての変遷というよりは、現在の業界事情による狭義のログハウスという観点から、森林資源(特に針葉樹)の豊富な北欧及び北米(ヨーロッパ移民による伝承)仕様のログハウスによって語られることが多い。
 北半球に位置する日本でも、古くから林業に従事する人々が住居や倉庫、作業所に当地の木材を使用して丸太小屋を建築していたし、奈良時代から平安初期にかけて多く造られた正倉の校倉造注1が日本での狭義のログハウスの最初ではないかとされている。ヨーロッパでは、紀元前3500年頃のフィンランドに、世界最古と思われる丸太組みの家屋の遺構が発見されており、バルカン半島のユーゴスラビアには、紀元前1500年頃のログハウスの遺構も発見されている。
 住宅様式としてのログハウスは、10世紀以降に北欧及び南欧、ロシアに及ぶ広範囲で建築されており(現代の丸太組構法に近似のログハウスは、フィンランドで1470年代に建築されたとされる住宅が最古)、17世紀を挟んでアメリカ大陸への移民が北米でログハウス建築を広めた。

 注1
 校倉造(あぜくらづくり)は、日本の伝統的な倉庫の建築様式である。高床式で、校木(あぜぎ)と呼ばれる木材を井桁状に組んで積み上げた外壁を特徴とし、奈良時代には社寺仏閣の宝物等の倉庫として、また律令制度下の時代背景から、租税(主に稲穂や穀物)の正倉(おおくら、しょうそう:重要な倉庫)として活用された。正倉は律令制の衰退による他、稲穂の保存法として俵による梱包技術が普及したことや、収納規模が校木の長さによるため、倉の大きさが制限されることなどにより、校倉造を採用する理由もなくなり、10世紀以降は建築されなくなっていった。
 現存する最古の正倉である奈良・東大寺の正倉院も当初は租税の倉庫として利用されていたと考えられるが、その後宝物等の格納庫として使用され、1875年(明治8年)3月10日、収蔵されていた宝物の重要性に鑑みて、東大寺から内務省の管理下に置かれ、大正、昭和と宮内省、宮内府、宮内庁管轄を経て1997年(平成9年)に国宝に指定。翌年には、「古都奈良の文化財」の一部として、ユネスコの世界遺産文化遺産に登録されている。


奈良・東大寺正倉院(イメージ:奈良国立博物館)

 日本の建築基準法においては、2002年5月を境に適合基準が変わり、それまで丸太組構法は平屋建てに限定(軒の高さ7m以下:昭和61年4月建設省告示「丸太組構法建築基準」)されており、2階まで組み上げることができなかった。そのため、2階部分をロフト(小屋裏)とし、居住空間としての利用を確保するため、ドーマーと呼ばれる屋根から突き出した窓を付けることが多かった。2002年5月、丸太組構法の新しい告示(平成14年5月15日国土交通省告示第411号 「丸太組構法を用いた建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める件」)が施行され、ログハウスの総2階建てが可能になった。丸太組構法による主な適用範囲は、地階を除く階数2以下、延べ面積300平米未満とし、軒の高さ8.5m未満、耐力壁線相互の距離6m以下、耐力壁線により囲まれた部分の水平投影面積30平米以下、通しボルトの設置などの条件を満たさなければならず、適用範囲以外のログハウスを建てる場合、安全性を確認するために構造計算が必要となっている。
 従って、コストや熟練技術などの関係で、本格的な総2階建てログハウスは現在でも少なく、既存のログハウスでは、1階は丸太組としても、2階を木造軸組構法(在来工法)とした複合建築方法を用いているものが多い。


丸太組2階建は希少(イメージ:神戸市北区)

【在宅勤務増加とストレス】
 “コロナ離婚”、“コロナDV”などの新造語が巷に溢れている。コロナウイルス感染拡大を抑止するため、国を挙げての外出自粛要請が日増しに強くなるなか、企業や行政機関においても満員電車などの密接空間を減らす措置として在宅による勤務形態を導入し、出勤停止を強制した。これを受けて、各種交通機関や飲食業、百貨店をはじめとする小売物販店舗の大小を問わず、また国内のありとあらゆる産業が、“人が動かない”という前代未聞の状態を受け、連鎖的に経済活動を停止せざるを得ない状況となった。2008年のリーマンショック後の景気後退をはるかに凌ぐ規模の経済危機が、今始まったのである。
 本年4月16日に首都圏、関西圏で発出された緊急事態宣言以降、勤め人の在宅勤務が推奨され、5月25日に宣言が解除されてからもなお在宅勤務を継続する企業は多く、これまで経験したことのない環境の変化により、特に家庭内やプライベートな関係における“歪”が顕在化している。
 コロナ離婚やコロナDVに代表される夫婦間、家族間という密接な関係に少なからず影響を及ぼしているのが“場”の在り方に起因する様々なストレス注2である。中には夫婦関係の破綻という重大な結果に、明日は我が身と溜息を吐きながら、テレワークに励んでいる方も多かろう。コロナ離婚など、そもそもコロナウイルスの出現以前から問題を抱えていた夫婦に、そのタイミングと口実を与えたものが殆どだろうと思いきや、弁護士相談のプラットフォームを運営する株式会社カケコム(本社東京都渋谷区)が行った「コロナウイルス感染拡大を受けて離婚を考えたことがある方(実際に離婚した人を含む)」を対象としたアンケートによると、コロナ発生前から離婚を考えていたという割合(かなり真剣に考えていた、何度か考えたことがある)が43%であったのに対し、コロナ感染拡大後に初めて離婚を考えた人は47%と、コロナウイルス禍によって夫婦関係が著しく悪化したことを裏付ける結果となっている。

 注2
 離婚に至る、離婚を真剣に考えるに至った様々な原因として、以下のような声が寄せられている。
 ★コロナの影響下での経済的不安とそれに対するパートナーとの価値観のずれ
 ★一緒の空間に居ることが多く、加えて収入が激減し、イライラが増した
 ★一緒に居ることそのものがストレスと感じることが分かった
 ★在宅でパートナーのメンタルが壊れ、一緒に居ると引き込まれそうになる不安
 ★パートナーから常に監視されているような恐怖感を覚える
 ★会社で出来たことが、在宅で再現できないことへの苛立ちと不安
 ★今までにない長時間を共に過ごす生活を経験して見えてきた相手の欠点
 ★パートナーのストレスの捌け口的に増す暴力
 ★コロナに対しての倫理観や衛生上の考え方の違いに気づいた
 ★共稼ぎということを認識できないパートナーの非協力的態度に限界
 ★一緒に居ることで相手のことを改めて考えたとき、それまでとは答えが違った
 ★相手の仕事(家事含む)ぶりを直接見ることで、尊敬の念を持てなくなった


在宅勤務でも家庭内では・・・(イメージ)

 日本の社会構造が組織を中心としたタテ社会の人間関係で構築されていることから、パートナーシップ(つまり、ヨコの繋がり)を基本とする夫婦関係に全くと言ってよいほど馴染みが薄い日本人の特徴が見て取れる。そのような人間関係をゼロから構築し直すことは現実的ではない。これはもう、生まれて育ってきた環境から変えていく必要があるからだ。では、このまま黙って破局を待つしかないのか。打開策は?

【新建材の家とログハウスの違い】
 日本の住宅の多くが新建材と呼ばれる部材、型式で造られている。新建材とは、化学物質を含む内装材や家具類、装飾類及び揮発性の接着剤などを使用した合板やボード、集成材などの総称で、1980年代にはこれらを多用して建築された新築住宅、リフォーム工事において、主として住宅室内の空気質に関する問題を引き起こす原因となる有機溶剤や揮発性有機化合物によって、目眩、頭痛、湿疹、咽喉痛、呼吸器系疾患などのアレルギー症状や体調不良(総じてシックハウス症候群注3と呼ぶ)など、現在に至るまで社会問題の一つになっている。また、そのころから住宅には熱効率を高めるため、高気密性が求められるようになったことも、住宅内の空気汚染に拍車を掛けてきた。
 一方、正統派ログハウス注4の特徴は、前述の新建材(主に内装材)を使用しないから空気汚染物質の排出が殆どなく、木本来が持つ性質によって湿度調整に優れ、断熱性も高いなど、夏は涼しくて冬は温かいということが挙げられる。

 注3
 シックハウス症候群の範囲は限定的ではないが、住宅などに使用される建材などから排出される有害化学物質としては、ホルムアルデヒド、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)、殺虫剤、防虫剤、シロアリ駆除剤などである。影響としては、蕁麻疹(じんましん)、気管支ぜんそく、アレルギー性皮膚炎などのアトピー性疾患等が挙げられる。
 一方で、シックハウス症候群と同様の症状は住宅環境に限られたことではなく、現代人の化学物質過敏が一因とされている(発生源が特定できないものも多い)。
 厚生労働省では、ホルムアルデヒド・アセトアルデヒド・トルエン・キシレン・スチレン・パラジクロロベンゼン・エチルベンゼン・テトラデカン・クロルピリホス・フェノブカルブ・ダイアジノン・フタル酸ジ-n-ブチル・フタル酸ジ-2-エチルヘキシルの13の物質について、室内濃度指針値を設定してその対策を講じている。


体調不良はフローリングが原因?(イメージ:四国加工株式会社)

 注4
 ログハウスに使用する木材は、国産材又は輸入材(ヨーロッパ及び北米)が主である。正統派とは、100%天然木材を使用して建築されるログハウスを指す。


~レッドパイン(欧州赤松)独特の風合い~

・国産材:スギ、ヒノキ、カラマツ、エゾマツ、トドマツなど
・ヨーロッパ産材:欧州赤松(パイン)、ドイツトウヒなど
・北米産材:ベイスギ、ベイツガ、スプルース、ロッジポール、パイン、ホワイトパインなど
ヨーロッパのログハウスは、工場で製材されたログ材を使うことにより、 システマチックに作り上げられることが可能となり、特殊な技術を必要としない建築のし易さも特徴である。
 一方、北米のログハウスは、そもそも北ヨーロッパの移民による伝承が起源であり、17世紀から18世紀に掛けて、アラスカ地方のゴールドラッシュにおける労働者の増大に対応するため、手作り(丸太のハンドカット)のログハウスが大量に供給されたことで北米における代表的な労働者住宅として定着した。アメリカ合衆国初代大統領のエイブラハム・リンカーンが「from log cabin to White House(ログキャビンからホワイトハウスへ)」と形容されたことから、貧困層の象徴として扱われたことから、次第に姿を消していき、20世紀後半の自然派志向によって復活する。

 【ポストコロナ、ウィズコロナのストレスをログハウスが解決する?】
 大和ハウス工業は、テレワーク利用を想定した2種類の住宅用空間を考案、提案営業を始めた。新型コロナウイルスの感染症対策で在宅勤務を行った同社社員にアンケートを行い、約3600人の要望を踏まえ商品化した。新築一戸建て住宅向けにまず提案し、リフォーム向けも順次計画していくとしている(大和ハウス工業広報)。
 コロナウイルス禍によって在宅を余儀なくされた日本のビジネス戦士たちが直面した現実は、想像以上に“仕事”がやり難い自宅環境と、家族関係のストレスであった。前出の大和ハウス工業の提案は、既存の住宅若しくはこれから建てる住宅に、集中して仕事が出来るテレワークスペースを設置することで、労働者側がウィズコロナ時代に適した住宅のカタチを模索するものである。


つながり派も独立派も快適に(イメージ:大和ハウス工業)

 一方で、企業自身がテレワークの本格的導入に向けて動き出している。急速に進むインターネット通信環境のなか、5Gの実質的な利用も直ぐそこまで来ている。国土の狭い日本では、国内何処に居ても快適な通信環境を享受することは難しくない。そして、3密を避けるためには、都会のオフィスへの通勤を極力少なくすることから始めるが、テレワークの拠点が社員従業者の自宅となると、個々の環境の違いから、均一な作業能率を確保出来ないことがネックとなり、新たな労働問題が生じる懸念がある。従って、テレワークには個人住宅よりも郊外の低廉な不動産環境を活用した新たな拠点づくりが求められよう。都心部では莫大な設備投資を余儀なくされるが、通勤という距離的な課題を問題にすることなく、既存の従業員の希望を分析しながら新たな地に新拠点を構えるのである。今社会問題となっている郊外の空き家を活用するもよし、業種によっては市街化調整区域や農林水産業の特区、特例法を活用した拠点づくりも可能となろう。
 それに加えて、折角の働き方、労働環境の改革である。労働者の健康を増進に寄与することを企業が考えなければ、拠点づくりも意味が半減するのではないか。そのためにこれまでに論じてきた”ログハウス“を活用すべきと提案したい。現在、ログハウスは材料や構法によって価格に大きな差が有るのだが、それは供給量の少なさもかなり影響しているから、企業の需要によって量産体制が整備されれば、自ずと価格は引き下げられる。ログハウスは壁式構造が主であることから、大空間を作りやすく、複数人が使用できるオフィス空間としても設計し易い。また、別荘として建てた既存のログハウスの多くは、利用頻度の少なさから空き家で放置されるケースも全国的に相当数存在している。これら中古のログハウスも再利用する価値はあるだろう。そうして全国各地に企業のテレワークオフィスが広がれば、地域活性化や雇用増進にも好影響必死であるし、地方創生の起爆剤にもなろう(夢を膨らませ過ぎかな?)。
 一般社団法人の日本ログハウス協会加盟企業によれば、ログハウスの外壁は、概ね5年に一度、専用の水性木材保護塗装を適確に施せば100年ぐらいは持つのだという(同協会通信2020年1月号)。個人住宅ではなおざりにされがちな住宅のメンテナンスも、企業所有となれば定期的に行うことも可能となる。また、それらを実質的に管理する地元不動産事業者の活躍の場も広がるはずだ。


中古ログハウスオフィスは既に地域での取り組みも(富士見町テレワークタウン計画))

 木の薫りのする心身共に優しいログオフィス。日本らしさの残る地方郊外で、世界最先端の仕事をする。そんな働き方を若者達は待っている。