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ラビットプレス+2月号


新型コロナウイルス感染症は必ず終息する(イメージ:米アレルギー感染症研究所・厚労省)

2019年12月、中国湖北省武漢市を中心に発生した新型コロナウイルス(2019-nCoVからCOVID-19に呼称変更)が病原とみられる急性肺炎は、瞬く間に中国国内から世界中に拡大を続け、本誌3月5日配信号で示した2月10日時点でのWHO発表による感染者確認数40,554人は、本項執筆時点(4月5日)で120万人(米ジョンズホプキンズ大学集計)を超えた。WHOによるパンデミック(世界的流行)が宣言された3月中旬以降、それまでは中国を震源とするアジア(日本含む)各地での感染者増大に代わり、それまで影を潜めていたかのようにヨーロッパ各地、とりわけフランス、スペイン、イタリア及び米国での感染者が一挙に膨れ上がり、主要都市間や国家間においても往来禁止措置が採られるなど、正に世界中がコロナ渦の激流に飲み込まれている。

本編が読者諸氏の下に届くころには、今のところ我が国政府が決断を躊躇している「非常事態宣言注1」や、それを受けて東京都が発する準備を急ぐ「ロックダウン(都市封鎖)注2」も行われた後かもしれない。
ここ一ヶ月足らずで状況が改善し、終息宣言が出されるとは到底考えられない状況だが、ウイルスによるパンデミックは、歴史的にも、医学的にも必ず終息する。問題は、その後の世界がどうなっているかだ。本編では収集可能な限りの情報と取材を基に、終息後の経済や人々の暮らし方、医療に対する考え方など、人類の進むべき方向や歩み方の変化を歴史を基に予想しながら、全ての国民が今から考え、行動を起こさなければならない具体策について検討を試みる。

注1
政府による「非常事態宣言」とは、災害などによって国家運営の危機的状態に陥っていると判断した際に宣言するもので、それに伴って特別法を発動することが可能となる。地方行政庁でも管轄地域内での非常時に知事が同様の宣言を行うことがあり、2010年に宮崎県で起きた口蹄疫の流行の際に、当時の宮崎県知事である東国原英夫氏が「非常事態宣言」を発している。
「緊急事態宣言」は、国連のWHO(世界保健機関)が、専門家による緊急委員会を開いて、「国際的に懸念される緊急事態」にあたるかどうかを協議して宣言するもので、2009年の新型インフルエンザ、2019年のエボラ出血熱など、現在までに5回の緊急事態宣言を出している。
今回頻繁に報道されている政府の「緊急事態宣言」とは、新型インフルエンザ対策特別措置法32条に基づくものである。

注2
ロックダウン(lock down)≒都市封鎖は、行政用語的に使われるが、正式な手続名や法令用語ではない。非常事態宣言に連動してある都市について人や物流の出入りを制限する行政措置として首長が行う。
本年3月26日午前の菅義偉官房長官は記者会見で、東京都の小池百合子知事が言及した「ロックダウン」の定義を問われた際、政府専門家会議の見解を基に「数週間、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止や生活必需品以外の店舗閉鎖などを行ったりする措置」と説明している。強制力を持たせるかどうかは、政府の非常事態宣言に関係した特例法や既存法令の援用に委ねられ、我が国では首長の「宣言」そのものに法的根拠がなく、強制力はない。


人口1100万人の武漢がゴーストタウンに(イメージ:産経新聞社)

【現時点での政府の経済対策は】
西村康稔経済再生担当大臣は4月5日、フジテレビの番組(日曜報道 THE PRIME)内で、新型コロナウイルス感染拡大防止に関し、改正新型インフルエンザ対策特別措置法(令和2年3月14日施行)に基づく緊急事態宣言(同法32条)注3の発令可能性に言及し、「非常に緊迫した状況になっている。全国的な蔓延が限りなく近づいているかどうかだと認識している」と述べた。また、一日の感染者報告数がついに100人を超えた東京都の小池百合子知事は、NHKの番組で緊急事態宣言に関し、「できるだけ早急に決断することが求められるのではないか。決断が何時なのか待っている」と述べ、政府に対応を促し、宣言を受けてのロックダウン実施という考えを伺わせる発言があった。

注3
令和2年2月1日2019-nCoVによる感染症は法令上「新型コロナウイルス感染症」という名称で、感染症法(「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」平成10年法律第114号)上の「指定感染症」に指定され、その後、改正新型インフルエンザ対策特別措置法上も新型コロナウイル感染症を対象とする感染症法の政令改正が行われ、3月27日に施行された。


今後、都内で毎日100人以上の感染者数が続くようだと、医療現場の機能崩壊を危惧して都知事はロックダウンに踏み切る可能性があり、病床、医師等を東京都だけでまかなえなくなるため、隣接県と広域連携し、危機を乗り切らなくてはならない。一週間程度ならまだしも、一ヶ月以上その状態が続くようであれば、中小の企業や店舗の倒産が急激に増え、東京都の消費は5~6割減少し、日本全体の個人消費は2.5兆円程度減少するという試算(NRIエコノミスト木内登英氏)も出されている。

4月2日、政府関係筋(官邸関係者)の聞き取りから、3月28日に安倍首相より「リーマンショック時を上回るかつてない規模の経済対策を、今後10日程度で取り纏めるように」との指示が直接あったとし、①生活困窮者に対する新たな給付金創設、②民間金融機関でも無利子融資が受けられる制度の整備と、特に厳しい環境下に置かれている中小・小規模事業者への新たな助成制度創設を、スピード感をもって具体化を急ぐとしている。
また、西村担当相は前述した番組内で、現金給付の対象は職種に制限を設けず、一定程度の収入が減っていることを条件に1世帯当たり30万円で政府と与党が合意しているが、感染拡大が長期化した場合、家庭への現金給付を「何回もする必要があるかもしれない」とも述べ、複数回の実施も視野に入れていることを明らかにした(既に制度が始まっている休校対応した保護者向けの助成金(休業補償)とは別途、子育て世帯を支援する給付金支給にも言及し、政府は子ども1人につき1万円とする方向で調整中。これについても複数回支給を視野に入れているとした)注4


西村新型コロナウイルス特措法担当大臣(イメージ:共同通信)

注4
政府が打ち出す各種の補助、助成等新型コロナウイルス感染症に関する国の施策については、厚生労働省はじめ各省庁がそれぞれ所管するため、横断的に検索できるWebサイト(リンク集)を首相官邸ホームページに「お役立ち情報」として掲載していますので、ご参照ください。
http://www.kantei.go.jp/jp/pages/coronavirus_index.html

【新型コロナウイルス感染症終息後の社会】
コロナウイルス禍は終息する。それは間違いない。何故なら人類の歴史上、幾度となくウイルスによる脅威に脅かされてきたが、鎮静化しなかったことは一度もない。時期は未定だが、いずれ新型コロナウイルスに対する抗体から新薬、特効薬の開発が行われるであろうからだ。重症肺炎などの合併症を引き起こし、残念にもお亡くなりになられてしまった方々のご冥福をお祈りすると共に、例え感染したとしても、今後の医療によってすべての患者が回復されることを信じている。
一方、新型コロナウイルス禍が終息し、社会が平常を取り戻したとき、失われた生活基盤や経済のサイクルなど、世界規模での復興が待っている。

我が国においては、2018年秋ごろを境にして景気動向指数は低下を始めていた。日本経済の全体的な景気の動向を表す指数である景気動向指数から導き出された基調判断では、2019年3月に、それまでの上向き、維持から「悪化」に転じていたことは見逃せない。つまり、昨年春には景気が悪化に転じ、それ以降個人消費や企業の設備投資も伸び悩む「不況」にあって、10月の消費税増税が断行されたのである。2019年10月から12月のGDP(国内総生産)の成長率は、▲1.7%(年率▲7.1%)であり、売り上げの減少が続いている中で消費増税がもたらした需要の減少のダメージが大きい。これは前回3%の消費税増税(2014年)直後の▲1.9%(年率▲7.4%)と殆ど変わらない急激な経済の収縮が起きている。消費増税による消費抑制効果というのは、「100年に一度の金融危機(リーマンショック)」や「1000年に一度の大震災(東日本大震災)」と並ぶ需要の減少をもたらすのである。
その状況下での新型コロナウイルス禍である。今正に三重苦(循環不況、消費増税ショック、コロナ不況)の真っ只中に在ることを前提に終息後の状況を予想し、的確な経済対策を講じなければ、日本経済は大きな深みから抜け出せなくなる可能性が高い。

具体的に今回のコロナウイルス禍に影響する業種業界の数字を挙げると次の通りである。
●飲食サービス業の年間販売額 約27兆円(総務省「産業連関H27」)
●観光関連の国内旅行年間消費 約20兆円(旅行・観光消費調査H30)
 同上訪日客旅行年間消費 約5兆円(訪日外国人旅行調査H30)
●国内イベント産業市場の年間規模 約17兆円(国内イベント消費規模集計H30)


訪日外国人の激減(資料:朝日新聞社)

この3業種における合計市場規模は、重複する部分を考慮したとしても年間50兆円に達し、月額4兆円を超える消費市場なのである。これに関連するすべての業種業界も当然に影響を受けることから、少なく見積もっても今回のコロナウイルス禍によって、月額5~6兆円規模で需要の縮小が続くと考えられ、我が国の年間一般予算に匹敵するテコ入れの必要性も現実味を帯びてきている。
また、コロナショックで特に需要を失っているのはサービス産業である。旅行や観光関係、飲食業の個人向けサービスの担い手は地元の中小・小規模事業者であり、総じて資本力に限界がある。これら事業者のコロナ倒産、廃業リスクは日増しに高くなっており、地域経済に与える影響は甚大である。

【リーマンショック比較では語れないコロナショック】
リーマンショックの特徴は金融市場の機能不全を原因とした実体経済への波及という道筋を辿った世界恐慌であった。リーマンショックはいきなり突然起きたわけではない。今回のウイルス禍とはまずここが違う。金融システムの崩壊に至る発端として、2008年9月15日、アメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングス(Lehman Brothers Holdings Inc.)が経営破綻した。その2年前(2006年)辺りから、サブプライム住宅ローンの延滞率の上昇が顕著になり始め、住宅バブルの崩壊と共に証券化されていたサブプライム住宅ローン(CMBS:Commercial Mortgage Backed Securities=商業不動産担保証券)の暴落をきっかけに幹事証券会社であったリーマンは莫大な不良債権を抱えて倒産した。リーマンの倒産が何故世界的な金融恐慌に発展したかというと、CMBSはアメリカの不動産バブルに乗じて世界中に広まっており、リーマンのCMBSを更に重層化するなどして、複雑に絡まった債権債務関係を修復不能にしてしまっていたからである。その結果、世界的な金融システムの機能不全が起こり、世界中の銀行や証券会社の相次ぐ連鎖倒産が市場経済を直撃し、世界恐慌に至ったわけだ。


リーマンブラザーズ破綻の一報を伝えた号外(イメージ:日経新聞社号外)

しかし、今回のコロナショックは、ある日突然現れた新型コロナウイルスという目に見えない自然の驚異によって、自国民の経済活動全体をストップさせ、直接実体経済における需要を消失させたのである。リーマンショックとの違いは、金融システムに機能不全が発生していないことであり、逆に世界中の中央銀行は、なりふり構わぬ経済対策を打ち出し、実体経済の崩壊を防ごうとしている。つまり、リーマンショック後の経済対策は、金融業界の再編と債券市場の整理が求められたが、コロナショック後の経済対策は、実体経済の早期回復のため、直接的な金融政策で且つ即効性のある方法が求められる。

【コロナウイルス禍終息後の日本はどう変わるか】
今回のコロナウイルス禍は必ず終息する。これは前述したとおりだが、終息後は発生前の状態に全てが戻るのかというと、そうではない。では、どう変わっているのか。今回特にダメージの大きい産業を例に見てみよう。

〇旅行業や旅館業など観光産業の場合
行き過ぎた感も否めないインバウンド依存について、既に現段階で様々な議論が沸き起こっている各業態で、観光産業の見直しが始まっている。
1.コロナ終息後のターゲットの見直し
2.観光資源そのものの見直し
3.日本に海外からの観光客を取り戻すための戦略の見直し
4.リピーターへの情報発信の検討

これらはコロナ発生前までに当然考えておかなければならなかった戦略的マーケティングであるが、振り返ると他力本願、自助努力無しでも増え続ける訪日外国人の対応に追われ、トラベルバブルに酔っていた自らへの猛省が込められている。
各国の移動制限が解除されたとき、一番に渡航先に選ばれる日本となるためには今何をすべきか。最も大切なことは情報発信である。それも正しく客観的な情報によって信頼を得ることだ。東日本大震災での原発事故を教訓に、ただやみくもに「安全」をアピールするのではなく、何が安全で、何が危険なのか。具体的且つスピーディーな情報メンテナンスが必要である。
また、観光資源の問題点や課題点などの再検討、検証を行い、訪日客の滞在や移動など、インサイト分析のレポートを活用して現状把握に努め、それ以上の魅力を引き出す努力も必要だ。勿論、国内一億二千万人の日本人に向けたマーケティングの構築は有益である。国内消費を高めるのに、観光は重要な産業である。


〇飲食サービス業の場合
本項執筆時点でも既に大打撃を受けている飲食サービス業では、政府や地方自治体による休業要請の最たるターゲットである。この業界の特徴は、小規模事業者、個人事業者の割合の高さであり、体力的に脆弱な事業者が多数を占めているので、コロナ終息までにどの程度の倒産、廃業が出るのか。
1.店内飲食からテイクアウト、デリバリースタイルへ
2.固定費、人件費の見直し
3.日銭営業からの脱却
4.大規模店舗の見直し

アメリカのグーグル社は、グーグルマップ上に新しく飲食業のテイクアウト、デリバリーボタンを追加設定した。これは営業自粛が続く中で、店舗営業からデリカテッセンに切り替え、生き残りを賭けた経営者らの要望に応えた結果だ。食文化を支えてきた世界中のレストランや個人経営の飲食店は、何とかして自慢の味を残したいという思いから、何とかしてその味を伝えたいという発想に転換し、店舗営業が出来ないという致命的な措置をプラスに変えようとしている。


また、営業が出来ようが出来まいが毎月必ず支出する固定費や人件費について、従来の常識を覆す仕組みの導入を検討するテナントオーナーも出てくるだろう。例えば、テナントの売り上げを専用レジで管理し、売り上げに応じたスライド賃料制の導入など、今回のように休業を余儀なくされる場合には、再開までの維持費をオーナーが負担することで優良店の廃業を最小限に抑えることも可能となる。
更には、これまで予約制の後払いが当然のルールだった飲食の仕組みを、逆転の発想で先払いとする「さきめし  注5」システム(「ごちめし」アプリの導入)を開発し、顧客の予約が入った時点で料金を回収する。これによって、不測の事態でのドタキャンを回避できると共に、今回のような状況下でも、終息後の食事の予約を受け付けることで、一定の資金繰りを確保することも出来る。地域の優良店の灯を消さないために、顧客が店舗の応援をするという側面もあって、登録店が増加しているという。

注5
「食」を通じた新しいコミュニケーションや価値観を提案するGigi株式会社(本社:福岡市、代表取締役:今井了介)は、当社の展開する“日本で一番飲食店にやさしい”フードテックサービス「ごちめし」を活用し、新型コロナウイルスの影響を受けている飲食店へ食事代を先払いし、コロナウイルスの終息後にお店を訪れてもらう「さきめし」という取り組みを拡大中。(同社プレスリリースによる)
※「さきめし」特設ページ:https://peraichi.com/landing_pages/view/sakimeshi


再開を待つ・・・(イメージ:ユニバーサルスタジオジャパン)


【不動産市場の予測】
前述のとおり、今回のコロナショックは金融システムの機能不全ではない。EUの中央銀行(ECB)は約90兆円に上る資金を準備し、EU加盟各国の国債の買い付けを行っている。アメリカでは、企業発行のCP(コマーシャルペーパー)の間接購入を、日銀はJリートや投資信託(上場に限る)の購入額を倍増すると発表。債券市場の下支えに世界中の中央銀行が動き出している。しかし、それにも係わらず、株や債券、金価格も下落が止まらない。本来であれば相反する動きを見せる資産が総じて安くなっているのには訳がある。すなわち、資産から資金が引き上げられ、現金化されてるのだ。


ECBヨーロッパ中央銀行のシンボル「ユーロマーク」(イメージ)


不動産市場では、機関投資家や金融政策によってターゲットとされる富裕層向けの投資市場と、実需を中心とした市場の二重構造がアベノミクス以降の特徴である。資金の逃避は投資市場の下落を意味し、都心を中心とした高額物件や、ファンドの収益物件は実力以上の高値で推移してきた結果、大幅な価格修正局面に入る可能性が高い。2020オリパラ以降の市場予測はもはや意味をなさず、コロナショックによる資金の引き上げは既に始まっていると見なければならない(前述)。
一方の実需市場はどうか。もし今回のコロナ騒動が起きていなければ、都心や大都市中心部の一部を除き、バブル期と違って実勢価格を維持してきた市場に混乱は起きなかったはずだ。しかし、今回のコロナショックでは、二重構造の下層(実需市場)においても価格の下落は免れないと見る。何故なら、コロナショックは実体経済の需要の消失が原因だからである。
新型コロナウイルス感染症のワクチン等、特効薬の開発には臨床期間を含めると1年以上掛かると言われている。 コロナウイルス禍の終息予想は難しいが、季節性インフルエンザを参考にすれば、大体半年ほどで終息するという見方も可能である。ただし、それには治療薬の開発も必須となる。非常事態が長引けば、当然に実体経済が悪化する。それは回復にも同等以上の時間を要するということだ。併せて国民の疲弊度は高くなり、予想以上に立ち直りの時間が必要となるだろう。不動産市場の価格調整期は投資市場において既に始まっており、コロナウイルス禍終息後に実需市場を巻き込んだ下落調整が進むが、バブル崩壊後の様相とは全く異なる現在の実需市場の実力からすれば、投資市場が実需市場に収儉(しゅうれん=纏まること)される流れが予想される。


実力以上の価格で推移していたエリアの不動産は要注意か?(イメージ)

参考レポート
・日本経済研究センター
・第一生命経済研究所
・野村総合研究所
・三井住友トラスト基礎研究所