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ラビットプレス+10月号


日韓GSOMIA終了の本当の意味とは?(共同通信:イメージ)

韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官は先月5日の国会予算決算特別委員会で、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了決定と関連した質問に対し、北朝鮮による挑発があった場合、「韓米の情報当局間による情報共有がリアルタイムで緊密になされている」ので問題はないとする一方、この決定を歓迎しているのは、「北や中国やロシアではないかと思う」と述べた。この発言に対して李洛淵(イ・ナクヨン)韓国首相は、「不適切な回答」だと注意を促す場面があったとソウル聯合ニュースが伝えた。もはや後には引けない状況下で韓国内の不協和音を象徴するような場面であるが、火種となった歴史問題と貿易問題の関係性や両国のこれまでの主張がどうであれ、韓国側の主観的な認識と同じレベルの問題として捉え、粛々と取り組むということにならなければ、折り合いをつけられないところまで膠着している。日韓の様々な問題は、国民レベルの感情論ではなく、極東アジアにおける軍事的な重要課題として捉えた調整が必要なのである。
日本国内においては先月11日、第4次安倍第2次改造内閣が発足し、「安定」と「挑戦」をスローガンに「強力な布陣」と自賛する新人事を発表。特にこれまで広い見識と毅然な態度で韓国との外交に一定評価を得ていた河野太郎氏を防衛相に「異動」させ、米国のポンペオ国務長官らとの信頼関係を維持し、日米間の安全保障協力の強化と日米韓関係の修復に向けた対応に当たる一方、茂木敏充氏を河野氏の後継として外務大臣にこれまた「異動」の人事を行った。茂木氏は経産相当時、日米貿易交渉で米国と対等に渡り合い、新しい貿易協定の締結を実現させる(本年8月)など、外交手腕も高評価で河野氏と共に「実務面で対等に喧嘩が出来る人材(政府関係筋)」として安倍首相の期待を背負う。国際政治では、軍事力は外交手段の重要なカードであり、外相と防衛相は、同盟国や友好国などと共に、安全保障協力を深化させる枠組み、「2プラス2」(外務・防衛担当閣僚会合)や日米安全保障協議委員会(同盟調整メカニズム・ACM)にも名を連ね、日本版NSC(国家安全保障会議)のメンバーでもある。安倍政権の、「国益を死守する」という姿勢の代表として、今後の対外交渉にあたる。


新内閣の顔ぶれ(首相官邸:イメージ)

【韓国は要る?要らない?】
唐突なテーマで申し訳ないが、世論の盛り上がりとは別の視点でこの問いに答えよう。
新内閣発足(9月11日)直後の記者会見で、防衛大臣に就任した河野太郎氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発脅威に対応するため、「日米韓3か国の連携が重要だ」と強調し、三国のしっかりとした連携のなかで対北朝鮮問題を解決していくことの必要性を述べた。外相時代の韓国に対する強硬姿勢を崩さない河野氏が、敢えて「日米韓」と韓国を含める軍事連携を口にするのには極東アジアの防衛という、我が国にとっても非常に重要な課題が在るからだ。


最近の貿易収支(時事通信)

8月22日、韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を発表した当日(日本時間22日21時)、米国防総省は、「アメリカと日本、韓国が連携し、友好関係を築くことができれば、われわれは強くなり、北東アジアは安全になる。情報の共有は共通の防衛政策と戦略を策定する上で鍵となる」として、GSOMIAは北東アジアの安全保障上、協定維持の必要性を訴えた(NHK報道)。
日米同盟と米韓同盟には本質的な違いがある。日米同盟は米軍が世界展開するための基盤を成しているが、米韓同盟は朝鮮半島における“北の脅威”から韓国を守ることに主眼を置いた単一目的の軍事同盟なのである。従って、現在の日米韓は疑似的な3国同盟の関係であり、日韓関係の悪化が米国に与える影響は重大注1である。ポンぺオ米国務長官が同盟国の韓国大統領の決断に、「大変失望した」と異例のコメントを出した本意は、米韓同盟よりも自身の保身を目的に、日韓関係重視の選択をしたことに対し、一国の大統領の資質に「失望した」のだ。

注1

米国は米韓同盟によって韓国防衛の責任を負っているので、有事の際には軍事作戦を展開しなければならない。これには日本の協力が欠かせないのだが、日韓の間には軍事協力を規定する条約は存在せず、唯一存在する協定がGSOMIAであり、これ自体が日米韓の同盟を繋ぎ止めていた存在だと言えるのである。その日韓のGSOMIAが終了すれば、米国の朝鮮半島における展開において日本国内の基地使用やその他施設(インフラを含む)の使用においても都度日米間の協議が必要であり、非常に非効率な行動を余儀なくされる。これは、軍事行動において致命傷となることは明らかなのだ。すなわち、朝鮮半島は日本抜きでは守れないのである。

【極東アジア地域の安全保障・・・38度線とアチソンライン】
8月28日、韓国の一般紙・中央日報日本語版社説に、「在韓米軍撤収を含む、北東アジア安保戦略の大幅な修正を米国が検討しないという保証はない」という趣旨の解説がなされた。アチソンラインとは、1950年当時の米国務長官ディーン・アチソン氏が共産主義と資本主義の水際を設定し、米国の極東における防衛界を公示するために考案した防衛線である。日本の北端・宗谷海峡から日本海を真っ直ぐに貫き、対馬海峡から台湾の東部、フィリピンへと抜ける海上に設定し、対馬と台湾、朝鮮半島はラインの外側(共産圏側)にあった。
1950年。成立したばかり(1948年建国)の朝鮮民族の分断国家である大韓民国(韓国)と、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の間で、金日成率いる北朝鮮軍が事実上の国境線とされた北緯38度線を越えて韓国領土内に侵略を仕掛けたことによって朝鮮戦争が勃発した。それから3年間に及ぶ戦いは、東西冷戦の中で自由主義陣営の西側諸国を中心とした国連軍と、共産主義を掲げる東側諸国の支援を受けた中国人民軍が交戦勢力として参戦し、実態は第三次世界大戦を彷彿させる東西代理戦争の様相を呈し、朝鮮半島全土が激しい戦禍に見舞われた。この戦争の原因が、「アメリカは、フィリピン、沖縄、日本、アリューシャン列島のラインの軍事防衛に責任を持つ。それ以外の地域は責任を持たない」とのアチソン国務長官の発言が、“米国の朝鮮半島放棄注2”という認識に繋がり、金日成の決断に影響を与えたと言われている。

注2

アチソンラインは、太平洋の制海権維持を意味する概念である。現代中国が第1、第2列島線や九段線などと呼ばれる防衛と進出のラインを定めているように、アジア大陸の東方沖合に並ぶ島々は、地政学的にひとつの基準となっている。
当時、共産勢力の進出に対する対抗策は確立しておらず、朝鮮半島の統治については、第二次大戦終戦直後は日本の総督府で継続する案や、信託統治案などもあり、李承晩(イ・スンハン大韓民国初代大統領)とGHQとの対立もあって、米国は韓国に信頼を置いていなかったという。そのような政治背景も影響した可能性はある。


北東アジアの防衛ラインが変わるかも!?(イメージ:産経新聞社)

北緯38度。地球儀を確認しても北朝鮮と韓国の境界線とは合致しない。
1950年当時、朝鮮半島はソ連と米国の分割占領地であり、そのラインを北緯38度で区切っていたことから、現在も北と南を分ける言葉として38度線の表現を使っている。そして朝鮮戦争が勃発し、やがて膠着状態を迎えて休戦に至るのだが、休戦協定直前の最前線、すなわち両軍がにらみ合っていた位置を繋ぎ合わせたラインが停戦ラインであり、現在まで事実上の国境と扱われている「軍事境界線」なのである。従って、現在も終戦を迎えていない朝鮮戦争の当事国において、国境は存在せず、あくまで停戦ラインなのである。

【韓国赤化がもたらす日米安保の危機・・・憲法改正に拍車か?】
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の信条と云われる“南北統一”が実現性を帯びてきている。北朝鮮の金正恩総書記の文批判声明はプロパガンダだということは関係筋では当然のこと。我が国ではメディア誘導によって金正恩と文在寅の蜜月が相当なスピードで崩壊しているごとく映るが、真実はそう簡単なものではない。金正恩は着々と朝鮮半島の“赤化統一”に向けて進み続けている。米朝会談に期待を膨らませ、躊躇していることなど決してない。日韓GSOMIA終了(本年11月22日)以降、情勢は大きく動くだろう。米朝首脳会談によって朝鮮戦争の終結が実現した場合、米軍が韓国に駐留する大義は失われ、“朝鮮戦争を終わらせた男”として次期大統領選挙に弾みを付けたいトランプ大統領は躊躇なく米軍を撤収させる。それはすなわち“38度線”が消失し、極東の防衛ラインが南下することを意味する。つまり、防衛の最前線が日本列島になるということだ。日本国内の米軍基地問題が動かないのも、我が国の防衛力強化について、米国が内政干渉を続けることも、航空自衛隊が移動式の警戒管制レーダーを小笠原諸島に配置したことや、陸自が日本の最西端である与那国島に沿岸監視部隊を配備したことも、全てが北東アジア地域における防衛ラインが南下することを前提として行われていることを我々国民は意識しなければならない。


・固定式警戒管制レーダー装置J/FPS-7の整備(約76億円)【見島、海栗島】
・航空警戒管制多重通信網の整備(約28億円)
【下甑島、奄美大島(奄美大島分屯基地・湯湾岳)、久米島】
・その他自衛隊施設の整備(約39億円)
【新島、佐渡、見島、福江島、下甑島、沖永良部島、硫黄島、奄美大島、宮古島】
平成29年度における有人国境離島地域における施設整備計画(防衛計画大綱)

先日就任したばかりの自民党稲田幹事長代行(元防衛大臣)は、講演先の滋賀県高島市において、「安倍総理大臣は自民党の悲願である憲法改正をあと2年の任期で実現するため一丸となって取り組むと強く述べた」と語り、これから国民に憲法改正の必要性を全国津々浦々を回って訴えていきたいと述べている(9月14日共同)。
中国は国際法を無視しても尖閣諸島と台湾を手中に収め、南シナ海での人工島の軍事化を進める。陸海空だけの防衛では時代遅れだ。宇宙衛星やサイバー、電磁波攻撃といった未知の領域でもイニシアティブを獲ろうと躍起だ。中国は信頼に足る隣国であるなどと思っている国民はおそらく居ないだろう。
他方、北方領土をめぐるロシアとの関係、核放棄もミサイル発射実験中止も一向に進展しない北朝鮮、拉致問題解決の糸口さえ未だに掴めていない。遠く中東のホルムズ海峡の安全は、原油の8割をその航路に頼るわが国の生命線であり、抑止力(軍事的)を持たない我が国の外交ではどうにもならないことは、先の安倍首相イラン訪問で明らかになった。

【日本国憲法9条】

第1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

貴方は変えたい?変えたくない?