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ラビットプレス+6月号


鎖国するって??(イメージ:資料・長崎大学薬学部)

8月2日。ついに日本政府は貿易管理上の優遇措置を受けることが出来る相手国の対象リストから大韓民国(韓国)を除外する閣議決定を下した。いわゆる「ホワイト国注1」からの除外である。これにより、日韓の対立が一層激しさを増し、深刻な国際問題へと発展している。
同日現在、日本がホワイト国として優遇指定している国々は27ヶ国。過去一度も指定を解除した例はなく、8月28日の除外施行後は、韓国に輸出する1000品目とも言われている様々な製品や部品について、輸出業者の通関手続き(一般手続き)が必須となり、輸入元に製品が届くまで相当な時間と、通関に掛かる費用や労力が必要となる。

注1

ホワイト国とは、大量破壊兵器の拡散を防ぐ国際的枠組みに参加し、その国の政府が適切に輸出管理制度の運用を行っていると認めた国の通商上の俗称である。軍事転用も可能な規制品目でも3年間有効な包括許可(一度通関手続きを行えば3年間は手続きが免除される)を得られるほか、それ以外の多くの分野の製品等についても事務手続きや個別の輸出許可取得が免除される。
日本の韓国に対するホワイト国指定は、アジア諸国で初である(2004年指定)。なお、世耕経済産業大臣は同日の記者会見で、「ホワイト国」という通称を廃止し、グループAという呼び方に改めると述べた。韓国が除外されれば、韓国はグループBに配されることとなる。

日韓関係は現在、従軍慰安婦及び元徴用工賠償訴訟に代表される外交、ホワイト国除外に関する貿易、GSOMIA注2廃棄や北朝鮮対策などの国防、竹島領有権を巡る領土問題において具体的且つ重要な課題を抱えている。政府間の対立では公平な視点で判断しても韓国に分が悪い。それら重要課題を解決できなければ、韓国経済は前代未聞の経済危機に陥り、米国を巻き込んだ東アジアの治安悪化から対中国・ロシアとの軍事バランスまで崩壊しかねない。そのことは世界中のメディアを介してこれまで何度も報道されている。にも関わらず、文在寅(ムンジェイン)大統領の舌禍は留まることを知らない。
一方の日本国内においても、過去例を見ないほど嫌韓世論の高まりと、安倍政権に対する本件についての対応を支持する国民は70%を超え(本年7月の産経新聞社とFNN合同世論調査)、安倍政権支持層では81%、政権不支持層でも55.2%の理解を得ている状況下で、政府の姿勢は強硬だ。

注2

GSOMIA(General Security of Military Information Agreement:軍事情報包括保護協定)
政府間の防衛秘密情報の交換を円滑にするための枠組みを指す。
例えば、情報の種類別に分類し、アクセス権限を限定したり、書類や電子情報などの形態ごとに保管方法をルール化したりする。また、当事国の事前承認なしに第三国に情報を提供したり、予め合意した目的外で情報を利用することも禁じる。我が国は米・仏・豪、韓国は米・英・ロなどと、個別にもGSOMIAを結んでいる。


文在寅政権の支持率推移(イメージ:毎日新聞社)

【国交断絶・・・韓国との国交断絶は何をもたらすのか】
国交断絶という言葉が最近の日韓関係でもてはやされている。国交を断絶するとは、平和的且つ友好的な国交を持つ二国間の関係を一部もしくは全部断ち切ることを言い、主権国家における行政的判断の下で行われる国内統制である。つまり、ある国の政府が断絶の相手国に関する貿易、渡航、経済的交流などを当該国内で禁止する政策で、これに違反した場合は国内法によって処罰され得る。従って、相手国が同様の措置を取っていない場合は、相手国内における罰則が無い場合も有り(例:日本は朝鮮民主主義人民共和国と国交を開いていない、所謂断絶状態に在るが、同国に渡航した日本人には何ら障害は発生しない)、その効果は経済的優位に立つ側からの経済制裁、文化的交流の制限などに言及される。また、この措置は戦争状態に至る事前措置として採られることが多い。
韓国との国交を断絶した場合、日本にどのような影響が出るのか。

我が国の韓国に対する貿易収支の黒字額は、2019年6月で前年同月比16.7%減の1,618億円となった。対韓国との貿易黒字は2015年1月から一貫して連続しており、その幅は2015年1月以降2017年3月の54.2%の高水準を維持している。本年1月から6月までの累積は9,869億円の黒字(前年の同期間に比べ16.5%縮小)。これは黒字幅が縮小傾向にある現在でも、年間、日本円にして約2兆円である。※財務省貿易統計による。
また、平成30年11月から31年1月までの3か月統計で、日本から韓国に渡航した日本人は77万人強であり、前年同期比約33%の増加となっている。他方、韓国から日本に入国した韓国人は本年1月だけでも約78万人。外国人の中でも第1位であり、韓国における日本人気は衰えていない。※政府観光局統計
その他、大小数え上げれば多数の影響(日本にとってのデメリット)は覚悟しなければならない一方、電機業界を例にとっても、日本と韓国の企業の競争は熾烈であるから、その競争相手が今回の輸出制限によって生産ラインに深刻な打撃が予想され、結果として競争力低下によるシェア奪回のチャンスが訪れると見る向きもある。資本財の輸出制限は本来、世界貿易機関(WTO)協定違反となるが、国交断絶という国家間安全保障上の理由が適用されるのであれば可能である。
まだまだある。これまで外交問題として多くの労力を割いてきた従軍慰安婦問題や元徴用工訴訟対応なども、国交を断ち切ることで相手にする必要はとりあえず無くなるし、外国人就労問題における韓国人の不法就労者などは一斉に送還させることも出来る。しかし、竹島領有権やGSOMIA、対中国及びロシア、北朝鮮との関係は急転直下で緊急事態となろう。日本の防衛関係予算は増大し、国防に掛かるアメリカとの関係をこれまで以上に強固にしなければならず、米軍基地移設問題などは大義の中に泡と化す可能性は高い。


日本の輸出は中国、韓国向けが大幅減退により赤字が続く(イメージ:日経新聞)

【日本の弱腰外交Vs韓国の告げ口外交】
本稿執筆時(2019.8.6)においては輸出規制の施行まで約3週間ある。従ってその影響や事情変更の有無は考慮できないが、現時点での二国間の情勢が大きく改善されないとの前提で言及する。
国内世論による安倍内閣、とりわけ韓国に対する措置や対応には多くの国民が賛同支持していることは前述のとおりである。SNSを含め、日本の世論も過激さを増しつつあり、国交断絶を望む声も多く見受けられる。国民感情が嫌韓に傾く中、政府の対応は褒められたものであるのか。外国メディアの多くが詰まるところ日本の輸出規制に対しての根本的な原因は、レーダー照射事件での韓国側の対応や従軍慰安婦問題の日韓合意破棄、元徴用工訴訟など、度重なる関係悪化要因を作り出す韓国に業を煮やした日本政府の制裁的対抗措置が本音であるとの分析を採用している。つまり、日本に同情的な記事においても、論調は韓国の主張を軸に展開されているということであり、これには菅義偉内閣官房長官、世耕弘成経済産業大臣、河野太郎外務大臣ら主要閣僚らによる発言が大きく影響している。いずれの閣僚も、元徴用工訴訟による対抗措置では断じてないとしながらも、記者団の執拗な質問に、「両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ」という経緯の説明を加えている。結局、この部分はどう弁明しても韓国側の輸出管理体制の不備が原因であるという理由の説明にはならず、全くもって不必要なフレーズである。過去の日本の弱腰外交の名残がここに来て露呈したと言わざるを得ない。
韓国側の狙いは、今回の輸出規制措置が元徴用工訴訟など、これまでに課題とされてきた両国間の歴史問題に対する報復であることをWTO(世界貿易機関)に対して殊更強調し、日本の主張する“安全保障上の正当性”を覆すことに他ならないのだ。それなのに、日本の政治家トップの名だたる閣僚がこぞって不必要なフレーズを世界中に発信してくれたことは、韓国にとっては千載一遇のチャンスであり、劣勢を大逆転する唯一の一穴なのであるから、ここぞとばかりにそのことだけを世界中に訴える手段に出たのは至極当然のことなのである。まんまと韓国に填められているということを、日本国民は冷静に考えなければならない。今回の反日戦略は、文在寅大統領の支持率アップが目当てであることは当然であるが、それだけではない。今回、彼らは本気で「二度と日本には負けない。勝利の歴史を作る。」(本年8月2日韓国政府緊急閣議での発言:聯合ニュース)と信じている。


国際司法裁判所に提訴か!?(イメージ:産経新聞)

【主権国家とは何か!?】
「主権とは国家の絶対的かつ永続的権力である」(Jean Bodin(1530~1596) フランスの社会思想家・政治家。国家論(1576)において最初に用いたとされ、近代的主権概念を確立した)という定義が示すように、近代国家の基本的な構成要因をその国家が国民及び領土を統治し、他国の如何なる法的制限や干渉も排除する独立性、そしてその権力の属性を確立していることとした。現在の国際法学では、国家の保持する最高権力であり、自衛権や独立権、領土権、国民の生存権なども主権の要素であるとする。「主権国家は、外交関係の樹立に合意したり、共通の問題を解決するために協力したりする二国間関係を、自由に構築できる。また、例えば欧州連合(EU)の一部として、あるいは国際的な気候変動条約の加盟国として、多国間の関係も持つことができる。この根底には、主権国家は他の如何なる権力や国家に対して、依存も従属もしていないという前提がある。(BBCニュースJAPAN:2017.10.11)」

主権国家、すなわち世界中の国々から「独立した国」として認められるには、国連への加盟(国家としての承認)が必要である。国連承認は、国際法による保護、世界銀行や国際通貨基金(IMF)の借款の利用、国境管理などが可能になり、世界中の経済圏との貿易が可能になり、制度を活用できるようになるし、貿易法に保護されることで、貿易協定なども締結できる。従って、現在の国際社会という枠組みの中では、国連が承認していない「国」は、“国家らしきもの”という扱い方をされる注3

注3

東アフリカの元英国保護領で、イタリア領ソマリアと統合したソマリランドは、1991年に一方的に独立を宣言し、ソマリランド共和国を発足させた。現在ソマリランド共和国は旧英領ソマリランドの西半部を支配しているが、国際的な国家承認は今も得られていない。
他方、旧ユーゴスラビアが解体した際に出来た6つの共和国のうち、セルビア共和国の一つの州であった「コソボ」は、セルビアからの独立を巡って紛争対立し、2008年に一方的に独立を宣言した。セルビアは独立を無効とし、国連の国際司法裁判所にこの問題を持ち込んだが、国際司法判断は独立宣言の違法性を棄却した。しかし、セルビア政府はコソボの分離独立を「永遠に認めない」と明言しており、ロシアもコソボの独立をセルビア政府の合意なしには承認しない意向で、中国もこれに同調しており、国連安全保障理事会で拒否権を持つ両国の反対により、同理事会での承認は困難となっている。また、インドなどの少数民族の独立運動問題を抱えている国々も承認しない意向を表明している(2018年1月時点での国連加盟107国が国家として二国間承認している)。
日本は2008年3月18日、コソボ共和国を国家として承認。2009年2月25日、外交関係を開設した(在オーストリア大使館がコソボを管轄中)。

日本は主権国家である。
従って、今回の問題の争点の一つ、元徴用工訴訟による韓国最高裁判所の判決に従わない姿勢は主権たる所以であることがお分かりだろう。しかし、対韓国における主権国家日本の外交はどうか。領土を確定しなければ国家としての原則が守られないにも係わらず、竹島はどうなっているのか。中国との尖閣諸島を巡る問題には海上保安庁が機銃掃射も辞さない対応を採ったというのに。
また、日本の主権は国民に属している。つまり国民主権国家である。政府は役人、国会は国民の代表たる議員で組織されている。従って他国に対する主権の発動は国会の職域だ。世論が通らない国会は羽をもがれた鳥である。安倍首相も、菅官房長官も、河野外務大臣も、世耕経済産業大臣においても、行政府の役人である。その身分は議員であっても、ひとたび政府に召し抱えられたら、国家公務員なのであるから、彼らが主権国家を主導するのはおかしいのである。しかしながら、今の国会の有様はどうだろう。竹島には領有権問題は存在しないと明言する首相官邸ではあるが、北方四島とはわけが違うのであり、韓国が行っている行為は正に主権を脅かす(既に侵害しているが)暴挙であることは、日本サイドから見れば(主権国家は自らを主体として判断することが原則正しいのである)明らかである。友好国であるから(あったというべき)とか、米国を挟んだ日韓の緊密な軍事協定に基づく安全保障に配慮して、などといった国家レベルの言い訳は、主権国家の存亡に関わる大問題をはらんでいる。


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【極東(アジア)の行方】
「極東」とは、16世紀ごろの大航海時代、ヨーロッパの国(主にポルトガル、スペイン、オランダ)がユーラシア大陸の東の極限を意識して使った言葉であり、現在では地政学・政治学上の極東、日米安全保障条約が定義する極東、ロシア極東など、一定の定義を付して使用されている。
いずれの意味においても日本は極東の一国であり、この国の行方は極東の隣国との関係を無視して語ることは出来ない。
≪脱亜論≫
明治17年(1885年)3月16日の日刊紙・時事新報に掲載された社説「脱亜論(後に石河幹明編・続福澤全集第2巻に収録されたため、以来、福澤諭吉が執筆したと言われているが確証はない)」には、当時の中国、朝鮮半島(清国、李氏朝鮮)と近く、極東に位置する日本の明治維新後の西洋に対する意識と、旧態依然として欧米を受け入れられずにいた隣国の状況を観察し、資本主義がもたらすこれからの世界地図を憂いて唯一生き残ることが出来るのは日本であり、隣国においては国家の維持すら難しいであろうと説いている。一方で、西洋(欧米)から見れば中国、朝鮮半島、日本は極東の文明の遅れた地域として一括りにされ、外交にも影響が出るなど、日本としては不幸なことだとし、清国、朝鮮の開明を待つことなく、いち早く極東から脱し、それら隣国とも欧米諸国と同様の付き合い方、つまりドライな外交を行うべきだと論じている。

今から遡ること134年。既にその頃、正に現在の日韓、日中関係と欧米列国との外交関係を言い当てているようだ。その後の日本の歩みについては今回は触れないが、第二次大戦後も敗戦国として連合国監視下に置かれてなお、主権回復に努めてきた先代指導者達にとって、一方で米国との関係強化(強化せざるを得なかった背景は理解するとして)が経済成長を助長した事実と反面、“物言えぬ主権国家”ともいうべき弱腰外交の土壌を生んだ。結果として、この国の次世代へのつけが正に今、顕在化してきたのではなかろうか。

「惡友ヲ親シム者ハ共ニ惡名ヲ免カル可ラズ我レハ心ニ於テ亞細亞東方ノ惡友ヲ謝絶スルモノナリ」(悪友=中国、朝鮮半島と親しくする者は、同様に悪名を免れない。私は心の中で東アジアの悪友との縁を切るべきと考えている)~脱亜論より抜粋~


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