トップページ > 2019年8月号 > マンスリー・トピックス

ラビットプレス+6月号


(イメージ:第25回参議院通常選挙は盛り上がったか?:資料提供・公明党)

毎回のことだが、衆議院、参議院を問わず、ここ何十年(図表1参照)来、国政選挙の投票率は低水準のまま推移している。政治離れが問題視されてから久しく、当の被選挙者(議員立候補者)からすれば、結果を読みやすく、また組織票に選挙活動を絞られる分、選挙戦は楽だろう(純粋な無所属候補者や少数政党にとっては大きな変化は望めないが)。


図表1.国政選挙における投票率の推移(総務省)

今回の参議院通常選挙における与野党の争点はこれまで以上にズレていた。主要新聞各社によれば、争点は大きく分けて三つ。
1.消費増税  2.憲法改正  3.年金問題 である。絞り込まれた選挙戦での争点が与野党の事情によってズレたのには各党の強みと弱みがほぼ一致するからである。要人を招いての全国各地で行われた街頭演説では、自民・公明の主張はほぼ一貫して「政治の安定」を殊更協調した。各論は反対派の主張に対する言い訳を並べただけだ。
一方の野党各党は、政権奪取の意欲と実力に乏しく、安定政権の名のもとに国民生活を犠牲にする安倍一強体質への批判を強め、各論における“持論”を展開した。これが平たく見ても結構曲者であり、十分な吟味を施したとは思えない財源の確保を根拠に美辞麗句、鼻先ニンジン的な耳障りを重視したお土産(教育無償化、待機児童解消、年金確保など)を用意して、与党批判に終始して終わった。主だったところでは、例えば憲法改正。与党自民党は公約実現のための具体案として、「改憲4項目注1」を挙げたが、立憲民主党は自民党案に反対の意思表示に留まる。また、共産党他も憲法改正論議そのものを拒否。維新にあっては、改憲を前提に憲法裁判所の設置案など、各論の各論を展開するも、尚早感が漂っていた。

注1

自民党は改憲を実行するために、自衛隊(9条関係)、緊急事態(73条関係)、参院選「合区」解消(47条関係)、教育の充実(26条、89条関係)の4項目に関する条文素案を公表し、改憲論争の具現化を目指しているが、公明党は依然改憲には慎重であり、自民内部の統制も図れているとは現段階では言い難い。

折しもG20(世界20ヶ国財務相・中央銀行総裁会議。世界的な経済の安定と成長をはかるための国際会議)が我が国で開催され、大阪における首脳会議と参議院選挙によって、国内外の諸問題を一挙にぶちまけることとなった。主催者である安倍首相においては参議院選挙へのアピールも兼ねた言動が目立ち、アメリカとの友好関係強化と中国台頭に神経を使う。一方で、弱腰外交の汚名を返上すべく、レーダー照射問題や徴用工訴訟問題からいつになく強い態度で牽制してきた韓国に対しては、G20終了後間髪を入れず、7月4日に半導体等(製造過程に必須のフッ化水素など3品目)輸出制限を発動して内外を驚かせた。


内閣官房長官会見(イメージ)

【日本の地位・中国との関係】
直近(2018年)の日本と中国の関係を量る両国の民間NPOの共同アンケート(「日本と中国 お互いをどうみてる?」言論NPO・日本、中国国際出版集団・中国が毎年実施)がある。今回は中国人約1500人、日本人約1000人に対してそれぞれの相手国に対する印象を調査(日本ではアンケート用紙回収、中国は面談聞き取り方式)し、中国人が日本に対して「良い、またはどちらかといえば良い印象を持っている」と答えた割合は、2017年の31.5%から42.2%に増加。逆に「良くない、またはどちらかといえば良くない」と答えた中国人の割合は、56.1%。これは前年比でマイナス10.7ポイント(2017年は66.8%)と大きく好転している。
反対に、日本人が中国に対して、「良い、またはどちらかといえば良い印象を持っている」と答えた割合は11.5%から13.1%と微増、「良くない、またはどちらかといえば良くない」が88.3%から86.3%とこちらは若干の減少となっている。中国に対する日本国民の印象がやや改善した理由は昨今の旅行ブームによるもので、政治的背景は度外視して見なければならない。そうはいっても中国に対して依然9割近くの日本国民が否定的であることに大きな変化はなく、長引く尖閣諸島問題や戦争責任に言及される歴史認識、南シナ海をはじめとする侵略的領有権問題、香港、台湾問題など、取り巻く諸外国と共に強い警戒心は根強いことがわかる。
一方、中国人の日本に対する意識の好転は、日本人同様の旅行による民間人の往来が増加したことによるものも在るが、10ポイント以上の急激な改善には、日中の政治関係において、双方の首脳が往来するまでになり、上述した嫌悪要因とは反対に、経済協力や北朝鮮対応への相互協力、対米関係の悪化の反動などが大きく影響していると見る。

中国では、大陸唯一の指導政党である中国共産党が一党支配している中で、党中央委員会注2(中国共産党最高指導機関)の示す理念と政策が全てであり、上層部の一挙手一投足に大陸全土が影響される。


全人代全体会議(イメージ)

注2

中国の国家最高意思決定機関は全人代(全国人民代表大会)であるが、規模及び序列からは中国共産党全国代表大会に劣る。つまり、中国共産党の意思決定を国家最高機関たる全人代であっても否定することは出来ないのである。その中にあって、絶大な権力と権限を有しているのが中央委員会(党大会において選出された中央委員と候補委員によって構成される。第17期中央委員会の構成は、中央委員が204名、候補委員が167名)である。中央委員会は党大会で決議された事項を執行し、党全体の活動を指導し、対外的に中国共産党を代表しており、そのトップが党中央委員会総書記である。現在、習近平国家主席がそのポストを担う。

昨年5月の李克強(り・こくきょう)中国国務院総理(首相)が7年ぶりに来日し、安倍晋三内閣総理大臣と会談に及んだ。また10月には安倍首相が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。更に、日本経団連会長など日本の経済界のトップが北京を訪問し、李首相と会談に臨むなど、国及び民間団体などの人的交流が活発化している。
河野太郎外務大臣と王毅(おう・き)中国国務委員兼外交部長は、日中平和友好条約署名40周年記念日にあたる、2018年8月12日に祝電を交換し、両国首脳及び外相は、日中平和友好条約の署名・締結以来40年間の日中関係の発展を評価するとともに、現在の関係改善の流れを踏まえつつ、両国の協力を深化させ、日中関係を更に発展させていくとの決意を電文に込めた(外務省在中国日本国大使館)。このように、両国の政治的友好関係を探る動きは政治関係の改善に寄与するものであり、上層部が対日政策として好転を望めば、民間レベルでも中国人の日本に対する意識は好転する。中国とはそういう国だと言える。

先に行われたG20参加国首脳会談終了後、王毅中国外相は随行記者団に説明を行い、日中首脳会談については、「両国関係のさらなる改善と発展の推進について10の共通認識に至り、日中間の4つの基本文書注3の確立した諸原則を遵守し、『互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない』との政治的共通認識を実行するなど、今後の日中関係の方向性を明確にした」と述べている。

注3

4つの基本文書とは、「日中共同声明・1972年」、「日中平和友好条約・1978年」、「日中共同宣言・1998年」、「『戦略的互恵関係』の包括的推進に関する日中共同声明・2008年」を指す。

一方、日本政府としては、双方が歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた、としたうえで、尖閣諸島等東シナ海の海域における諸問題に関しては、双方の見解は異なるとしながらも、情勢の悪化を防ぎ、不測の事態の発生を回避する意見で一致。政治、外交、安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見が一致したと公表している(外務省)。

【日本の地位・韓国との関係】
韓国に対する日本の半導体等輸出制限が韓国国内で問題視されるなか、世論調査で日本に好感を持っている韓国人が12%にとどまり、調査開始以来、最低となった。 韓国ギャラップ社は12日、日本の輸出規制を巡る世論調査の結果を発表し、どちらに責任があるかという質問に対する回答では、「日本政府」が61%、「韓国政府」は17%となった。また、日本製品の不買運動に参加する意向があると答えた人は67%であった。更に、「日本に好感が持てる」という回答は12%にとどまり、1991年の同調査開始以来、最低となった。
徴用工問題や慰安婦問題に対する戦後処理は国際的にも「完全かつ最終的」に決着してる。これは紛れもない真実である。日韓両国は1965年に締結された日韓基本条約の付随協約により、国家予算の二倍強(当時)の協力金(日韓の間に戦争はなく、賠償義務がないため賠償金とは呼ばない)を日本が韓国に支払うことにより、日韓両国間の請求権問題は普遍的解決をみている。また、日本政府としての公式謝罪要求に対しては、平成5年8月の河野談話(河野内閣官房長官)、自主的に平成7年8月15日、当時の内閣総理大臣村山富市が終戦記念日の50周年記念式典で発表した「村山談話」により公式に謝罪している。これら外交上の公式見解が幾度となく繰り返し出されている国は世界中探しても見当たらない。にも拘わらず、韓国が執拗に謝罪と賠償を求める理由は、韓国という国の性質によるものであり、これは対話で解決できるものではない。たとえ両国の話し合いで解決したとしても、韓国では政権が代わる度に反日を軸に時の大統領の政策方針が出されるわけで、「反日」というキーワード抜きに韓国という国体の維持は成り立たないのである。すなわち、韓国政権の正統性は日韓併合からの自主独立にあり、国の正統性は歴史の事実ではなく、徹底した反日教育に基づく歴史の創作からもたらされている。
1965年の日韓基本条約にて日本から韓国へ支払った5億ドル(有償2億ドル、無償3億ドル)は除き、1998年までの韓国へのODA(政府開発援助)実績累計は、贈与無償資金協力累計 233.84億円、技術協力 913.72億円、政府貸与支出総額 3,601.54億円。その後も韓国への資金及び技術の提供は民間レベルで続いており、2018年2月9日、平昌(ピョンチャン)オリンピック開会式に出席するため韓国・平昌を訪問し日韓首脳会談を行った安倍総理は、「日韓合意注4は、国と国との約束であり、政権が代わっても約束を守ることは国際的かつ普遍的に認められた原則。日本政府は既に約束を全て実施している。韓国側も日韓合意で、『最終的かつ不可逆的』な解決を確認した以上、合意の約束を全て実行してほしい」と述べた。

注4

日韓合意とは、日韓両政府が発表した旧日本軍による従軍慰安婦問題を巡る合意で、両国外相がそれぞれ代表して国交正常化(日韓基本条約締結)50周年に当たる2015年の12月、両国政府が慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決させること」で合意したことを会見した。なお、公式文書は交わされていない。


不買、不売…(イメージ:news week J)

【日本の地位・アメリカとの関係】
米ギャラップ社による世論調査の結果、アメリカと日本の関係は極めて良好で、アメリカ人の日本に対する好印象は、過去最高の87%を占めたと発表した(2018.3.6)。特に2005年以降は10年(77%)を除いて80%台を維持しており、背景には経済的ライバル関係から米同盟国の色が濃く表れてきたからではないか、と分析している。
令和元年6月28日に行われたG20参加国首脳会議の前段の日米首脳会談では、4月の安倍総理訪米、5月のトランプ大統領夫妻の国賓としての訪日に加え、改めてトランプ大統領が訪日するなど、短期間にこれだけ頻繁に首脳の往来があることは、日米同盟が史上かつてなく強固である証である、との認識を共有し、日米同盟を今後とも一層強化していくことで一致した(外務省)。この日の首脳会談は、G20サミットに絡めた短時間のセレモニーであることから、現段階での日米関係を評価するには、各分野における協議の中身を見なければならない。
安倍首相は、5月の首脳会談の席上、貿易問題については、「世界で最もアメリカの経済に協力しているのが日本企業。前回の首脳会談から、たった1ヶ月で日本企業による対米投資は10億ドルも増加した。旺盛な投資欲のもと日本企業は対米投資を次々と決定している」と日本企業のアメリカ経済への貢献をアピールし、それを受けてトランプ大統領は、「日本とは何年もの間、信じられないくらいの大きな貿易の不均衡があり、日本の利益になってきた。日本人はすばらしいビジネスマンであり、すばらしい交渉者でもあり、われわれはとても厳しい立場に立たされている」と貿易赤字への不満を皮肉交じりに返したが、その一方で、「私は日本との交渉はうまくやれると思っている」と圧力を掛けた。アメリカが期待するのは、農産品の日本への輸出拡大で、大統領選挙を見据えて、支持層である農家に向けた成果の必要性からだ。
また、安全保障について、一部の報道(ブルームバーグ通信の報道)でトランプ大統領が「日米安全保障条約は不公平であり、破棄も含めて見直すべき」という考えを側近に漏らしたと伝えられたが、菅義偉内閣官房長官は、6月25日午後の会見で、「報道にあるような日米安保見直しといった話は全くない。米大統領府からも米政府の立場と相いれないものであるとの確認を得ている」と語った上で、「日米同盟はわが国の外交安全保障の基軸」であり、「日米安保体制は同盟関係の中核を成すものだ」と指摘した。トランプ大統領自身、5月の訪日時に横須賀基地で、米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」に乗船し、乗組員らを前に、「米日の同盟はかつてないほど強固だ」と述べた。また、同基地について、「米海軍の艦隊と同盟国の艦隊が、共に司令部を置く世界で唯一の港だ。鉄壁の日米協力関係の証だ」と語っている。


G20大阪サミット(イメージ:外務省)

【参議院選挙後の課題・・・憲法改正】
安倍政権にとって悲願中の悲願は、憲法改正である。憲法96条では、改正の要件として、衆参各院で総議員の3分の2以上の賛成で発議し、国民投票で過半数が賛成することと定めている。安倍晋三首相は改憲の入り口として、発議要件を衆参の「3分の2以上」から「過半数」の賛成に緩和する改正を掲げる。先ずはそこからだが、これすら手付かずの状況で、今夏の参議院選挙には公明党からの立候補を抑制し、すべての小選挙区で自民党公認候補を擁立した。公明党は連立与党のパートナーであるが、憲法改正には慎重で、自民党と改憲には賛成の日本維新の会、諸派若干名を含めて3分の2を確保したいとの考えだ。

名 称届出上の
代表者
衆議院
議席数
参議院
議席数
自由民主党 (1955 - )安倍晋三284122406
立憲民主党 (2017 - )枝野幸男552479
国民民主党 (2018 - )玉木雄一郎392362
公明党 (1998 - )山口那津男292554
日本共産党 (1922 - )志位和夫121426
日本維新の会 (2015 - )松井一郎111324
社会民主党 (1945 - )又市征治224
希望の党 (2018 - )中山成彬213
沖縄社会大衆党 (1950 - )大城一馬011
れいわ新選組 (2019 - )山本太郎011
無所属301141
欠員156
計(定数)465242707

※令和元年7月4日現在の国会

そもそも憲法改正は何のために行うのか!?
この問いかけには様々な反応が返ってくる。憲法改正の要否に戻って、議論は飛び火する。戦後、GHQ主導の下で制定された日本国憲法。多くの議員、官僚、日本人憲法学者も参画して激論の末完成させたことは評価に値する。しかしながら、敗戦国の憲法制定に国体の自主性が盛り込まれることはない。自主独立国家の憲法、とりわけその前文には、国の主体性と姿が刻まれているものだ。我が日本国憲法は前文で、「(前略)平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。(後略)」と謳い、まさに「自国の命運を他国に委ねる」という、正に無責任かつ他力国家の本質をここに見ることができるではないか。民定憲法として1946年(昭和21年)11月3日に公布され、1947年(昭和22年)5月3日に施行された当時、この憲法は暫定法として保守政党のみならず社会党も含めた政界全体の認識の下でスタートした。すなわち、近い将来、自主独立の国家運営が軌道に乗った暁には、憲法を改正することは当然であった。しかし、それから73年の年月を経て、誤植の一文字注5でさえ改正出来ずに今日を迎えている。

注5

日本国憲法
第7条
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
※衆参同日選挙でも参議院は常に半数改選なので、「国会議員の総選挙」は日本国憲法では存在しない。従って、『総』の文字は誤植である。

現在の改憲論議は、憲法の条文を変えるか変えないかの議論に終始しており、制定当初の目標を忘却してしまった。憲法論議とは、この国の運営そのものを議論の核とし、時代に即した国家経営論の先に条文改正が必要である。ところが、誤植も含めて一字一句変えてはならないとする護憲派と、日本国憲法(特に9条)の字句を何が何でも変えたい改憲派。現行条文を変えずとも我が国が核を保有することは可能だと公言した歴代内閣注6に倣い、集団的自衛権の行使を閣議決定し、解釈変更で憲法違反を平気で行う現政権など、もはや立憲主義の欠片もない日本国憲法は、ザル法と揶揄される事態となっている。

注6

岸信介は総理就任後初の訪米を一ヶ月半後に控えた1957年5月7日、参議院内閣委員会で自衛核武装合憲論を展開した。これには岸の訪米目的がサンフランシスコ講和条約と共に締結させられた日米安全保障条約改定にあり、自衛のための核兵器保持は違憲ではないという持論を外交カードとして持ち、渡米したと言われている。また、安倍首相が内閣官房副長官時代(2002年)に、「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね。憲法上は、小型であればですね」、「戦術核を使うということは昭和35年(1960年)の岸(信介=故人)総理答弁で『違憲ではない』という答弁がされています。それは違憲ではないのですが、日本人はちょっとそこを誤解しているんです」と述べ、政界に激震を走らせた。


憲法制定時の審議録(イメージ:公財特別区協議会蔵)

憲法改正の目的とは、日本の自主防衛のための手段を明確にすること。それがこの国の行方を決めるのである。