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ラビットプレス+3月号


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平成元年≒1989年。
この年に流行した大衆文化や先端技術、様々なジャンルの消費者受けした製品を振り返ってみると、筆者の狭い了見で恐縮だが、先ず任天堂携帯ゲーム機「ゲームボーイ」を挙げたい。価格は当時12,500円(消費税込み)。決して安い買い物とは思わない、子供の“おもちゃ”としては高額だった。また、この年の4月1日より、我々の生活に最も影響を与え続けている税金と言っても過言ではない、「消費税」が導入された(税率3%)。元は1979年(昭和54年) 第35回総選挙において、当時の大平正芳首相が一般消費税(税率5%)の導入を打ち出すが、自民党が過半数割れに追い込まれる大敗を喫してお蔵入りに。その後間接税導入の議論を経て、1940年から事業者に納税義務を課していた特別税である「物品税注1」を廃止し、消費者全般を担税者とする仕組みに転換した消費税法が施行されたのである。
また、1月7日、昭和天皇崩御による国内自粛ムードは、外出を控えた国民の多くが家庭や自宅でビデオ観賞に浸ったため、その後にレンタルビデオショップが隆盛を極める原因の一つとなった。
日本の改元年は、世界の潮流が変わった重要な転換期であった。
この年の2月。ソビエト連邦(現ロシア)がアフガニスタンから完全撤退。11月にはベルリンの壁が崩壊し、翌年10月の東西ドイツ統一(再統一)へ一気に流れが傾くこととなった。また、米国とソ連の両首脳注2が12月、地中海マルタ島沖合のソ連客船で行われた会談(1989・マルタ会談)において、米ソ冷戦の終結を宣言するなど、第二次世界大戦から東西陣営を主導してきたリーダー国によって、世界平和のための大きな一歩を踏み出した。

注1

一定の物品の消費に課される間接消費税。物品税法(1962年)に基づく国税。1940年に奢侈(しゃし=贅沢)品を対象に創設された。貴金属など奢侈品(第1種)、自動車・テレビ・電気器具、カメラ、時計、飲料など(第2種)に課税。1989年4月の消費税創設に伴い廃止された(マイぺディア百科事典)。

注2

冷戦とは、第二次世界大戦後、社会主義・共産主義国家を東陣営、資本主義・自由経済国家を西側陣営と二分し、それぞれの盟主であるソビエト連邦、アメリカ合衆国とが事実上の戦争(軍事火力の行使)は行わず、外交、政策、経済、軍事等あらゆる面で徹底的に対立した時代を指す。その冷戦終結に臨んだのが、ミハエル・ゴルバチョフ ソ連最高幹部会議議長と、ジョージ・H・W・ブッシュ アメリカ第41代大統領である。

前述の「ゲームボーイ」に話は戻るが、拙者が何故平成の一大事としてゲームボーイを挙げたかというと、正に今、街中の風景と化した“スマホ”でのオンラインゲームと時を隔てて同じ状況を生んだからである。普及台数においては、雲泥の差はあるが、何時でも何処でも手軽に持ち運べて使えるゲーム機という、それまでの家庭内ゲーム機の概念を一気に破り去ったもので、ゆとり世代を生きてきた現代の青年層におけるスマホ依存の根源を見ることが出来る。


ゲームボーイ発売以降、携帯ゲーム機の進化は続いた(イメージ)

昭和の終わりから平成にかけて、通信技術は革命的に発達する時代を迎えた。元々米国が軍事用に開発したという俗説注3が定説となっているインターネット(internet:interとは中間という意味で、net=LANの中間にあるものを意味する)であるが、1960年J・C・R・リックライダー(マサチューセッツ工科大教授・コンピュータ研究の第一人者と云われる)の論文「タイムシェアリングシステム」が発表され、インターネットの前身ARPANET(アーパネット:Advanced Research Projects Agency Network訳・米国防総省高等研究計画局ネットワーク。1969年に世界で初めて運用されたパケット通信コンピュータネットワーク)に影響を与え、1988年、アメリカで商用インターネットが開始されると翌年には学術用ネットワーク・NSFNetと接続し、インターネットのバックボーンとしてのネットワークが世界中に拡大していった。

注3

最先端科学技術の軍事利用への転用のための研究を取り扱う組織として、米国防総省に高等研究計画局(ARPA; Advanced Research Projects Agency)が設置され、同局の資金提供によりARPANETが構築されたが、ARPAは軍事目的に限らず、一般公募により、様々な研究への資金提供を幅広く行っていた。その資金提供の一つとして1967年に研究が開始されたプロジェクトが、インターネットの始まりである。

日本のネットワーク研究は、1974年に東京大学と京都大学をパケット通信網により接続する形で「N-1ネットワーク」の運用が開始され、1980年代には国内の多くの大学が接続するようになった(2000年問題への対応を契機に1999年の大晦日を以て運用を終了)。
ARPANETの稼働から僅か20年程の間に全世界を網羅するネットワークに発達したインターネットであるが、誰でもが参加出来るという特性の結果、利用する人々の自由度の高さがもたらす様々な問題を世に送り続けていることも事実である。平成はインターネットと共に在ると言えるのだが、このインターネットの普及が平成の人々に幸福をもたらしたと言えるのだろうか。


ネットワークという概念(イメージ)

【貴方の知らないインターネット】

インターネットの特性というと何が一番に躍り出るだろうか。“繋がる”というキーワードの奥に、実はインターネットのインターネットたる所以が在る。

“故障しないシステム”

これこそがインターネットの特性なのである。どういうことかというと、インターネットは様々な通信技術をフルに活用するシステムであるが、「分散型」のネットワークは、複数の回線をメッシュ構造のように繋げ、パケット交換という通信方式を採用することで、接続先の回路に不具合が生じても、無限大の迂回路を利用して指定先にデータ送信を行うことが出来ることである。

インターネットの運営主体は何処なのか?ネットワーク上で何か起こった場合の責任は誰が負うのか?など、一般人ならとても気になるところである。
実はインターネットには元請けや親会社、組織というものは存在しない。インターネットは、無数に存在する個々のネットワークが相互に接続された全体を示すので、その起源から現在に到るまで、単一の組織や企業が一元的に管理するといった構造を取ったことは無い。
一方、インターネットの運営には、通信プロトコルの標準化や統一された識別子の管理分配方法、IPアドレスとドメインの管理等々、インターネット全体で共有されるルールの策定は最重要課題である。スタート時点では、少数の科学技術計算用のコンピュータネットワーク相互接続からはじまり、今では40億人を超えると云われる利用者を抱えるグローバルネットワークに発達し、少人数のコンピュータ技術者の合議で足りていたルール策定作業は、インターネットを利用する様々な人々の関与を必要とする社会参加型インフラの構築という他に類を見ない構造となっている。
そこで最も重要なインターネットの資源管理という側面から見れば、やはり何がしかの機関が実務を担わなければ、共通ルールのもので運用することは出来ない。


最初はこんなものだった・・・(イメージ)

インターネットの発祥の地、米国では当初、政府の委託によって南カリフォルニア大学情報科学研究所(ISI)がIPアドレスとドメインの管理を行っていた。これをIANA(Internet Assigned Numbers Authority)プロジェクトと呼び、ドメイン名、IPアドレス、プロトコル番号など、インターネット資源の全体的な管理を行っていた。その後、1998年10月に設立された民間の非営利法人・ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)に引き継ぎ、インターネット資源管理に関するポリシー課題について中心的な議論の場として運営されるようになり、現在では世界各国、各地域から様々な関係者が参加する組織となっている。また、インターネット技術の標準化を進める団体組織としてIETF(Internet Engineering Task Force:1986年インターネットの技術コミュニティ全体の方向性やインターネット全体のarchitectureについての議論を行う技術者の集団IABによって認可された)が在り、ICANNが資源管理を担当し、技術面でIETFが責任を負っている。
IETFでは、インターネットプロトコルなどに関する開発(例:IPプロトコルやTCPプロトコルなど)を行い、RFC(Request for Comments:インターネット技術文書)として公開する。ICANN、 IETFは、共に非常に開かれた組織で、原則として誰でも参加できるというところがインターネットガバナンス(インターネットを健全に運営する上で必要なルール作りや仕組み、それらを検討して実施する体制と定義される)そのものなのである。

【インターネットとの付き合い方】

皆さんは日頃、インターネットとどのような付き合い方をされているのだろうか。
「インターネット白書(Internet white paper)注4」アーカイブを辿ると、改めてその変遷に驚きを覚える。


同白書は1996年(平成8年)から毎年刊行されているが、この年をインターネット元年と表しており、続いて翌年の白書の表紙には、「日本のインターネット人口が578万1千人」、翌年の表紙は「1000万人突破!」、更に1999年(平成11年)は、「1508万4千6百人」・・・、2002年の表紙に踊る数字は、「日本のインターネット人口4619万5千7百人」とのことだ。また、2012年(平成24年)白書には、“日本のソーシャルメディア人口”と表され、5060万人がスマートフォンやタブレット端末などを利用し、SNSを利用していると報じた。この間、僅か10数年。この中に本誌の読者は全員含まれているわけだ。

注4

「インターネット白書」は1996年の創刊以来、日本のインターネットの成長や変化を毎年まとめてきたインターネットの書籍年鑑で、一般財団法人インターネット協会監修の下、専門家による寄稿と、市場動向調査により構成されてきた。現在は、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)も加わり、3団体の協力のもと、「The Internet for Everything」というキャッチフレーズを掲げて、より広範なインターネットの可能性をレポートしている。

本編執筆中の1月31日、「インターネット白書2019」が発刊された。
メインタイトルは、「デジタルファースト社会への大転換が始まる」だ。白書では、その年度のインターネット10大ニュースをキーワード別に紹介するのが恒例で、本年は以下のトピックスが組まれている。内容は著作の関係で当然書けないので、公表されている紹介文のみ、要約する。

  1. キャッシュレス社会
    店舗側の導入コストが低くインバウンド対応も兼ねたコード決済が一気に拡大。決済インフラは対面/非対面の境界が曖昧に。
  2. 買い物革命
    [ DtoC:direct to consumer](メーカーが流通業者を通さず自社ECサイトで商品を販売すること)は、SNSを駆使する消費者とのコミュニケーションが成功の鍵!店舗体験を大きく変えるレジ無しコンビニも話題。
  3. DApps
    ブロックチェーンでは、対改竄性や透明性、データの独立性といった特徴の活用を模索。DAppsとは、耐改竄性を活かして契約をプログラム的に実行する「スマートコントラクト」を利用したアプリケーションをいう。
  4. バーチャルYouTuber
    YouTubeやTikTokで人気となった一般人がマスメディアに登場。ネット発のタレントに市民権が与えられた。今後は技術面の発展を背景にした「バーチャルYouTuber」が注目される。
  5. データエコノミー(情報銀行:個人が自身の情報を主体的に管理・提供して活用するための仕組み)
    政府では行政手続きの効率化を目指して「デジタルファースト法案」が検討されている。多方面から収集されるデータとAIによる分析が、今後の経済や公共サービスの発展を支えると考えられており、官民での取り組みが活発化。
  6. プライバシー保護
    購買履歴や検索履歴などの個人データがビジネスにおいて大きな価値を持つようになった現在、それらを利用して莫大な収益を得ているGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような巨大IT企業に対して、特にヨーロッパでは抵抗感が高まっている。eプライバシー規制法案やデジタル税を準備して対抗か。
  7. 5G(第5世代移動通信システム・次世代無線通信システム)
    米国では、2018年に数社が商用サービスを開始。世界各国で準備が進む中、日本でも、2020年の本格的なサービス開始に向けて進んでいる。
  8. LPWA(高感度な安定通信、長距離伝送性能を備えた次世代無線通信規格)
    特にIoT分野での導入が世界的に進んでいる。高速移動体や長距離伝送でも好感度の安定的な通信環境を実現する。セルラー系、非セルラー系の規格間で競争が激化する。
  9. サイバー戦争
    国際政治の動向は、サイバースペース(電脳空間)に対する軍事的関心の高まりによって、各国がサイバースペースの安全保障やサイバーシステムを使った軍事作戦を検討していることは明らか。国際規範や条約を求める動きが強化される。
  10. インターネット文明
    慶應義塾大学・村井純教授は、「インターネットという道具によって新たな文明が生まれた」と語る。国家の規制や監視を強めようとする動きと、グローバルで不可侵な空間として捉えて、共生、協調を図ろうとする国際的な動きの中で、インターネットはどう進化していくのか。


5Gの世界・・・通信速度は4Gの凡そ100倍に

平成20年を過ぎた頃から読者の皆さんの時間の使い方に変化は無かったろうか?いや、有る筈だ。1日のうちに相当時間、スマートフォンと過ごすことが生活の一部として組み込まれた筈である。ある人は、それが知らずのうちに大きなウェイトを占め、またある人には就寝時間が大幅にずれ込んだり、それまでの趣味を止めてしまったりしているだろう。インターネットを使って何をするのかは人それぞれ違いはあっても、インターネットに拘束される時間が圧倒的に増えたことは紛れもない現実である。

2019年の白書に上った10のキーワードをご覧になれば、社会におけるインターネットの重要性を否定できる筈が無い。今更後戻りなど不可能なところまで来てしまったインターネット社会に、利便性や優位性ばかりを負う消費者の知らないところで、インターネットならではの危険性が増幅している。キャッシュレス社会の到来は、新たな金銭搾取のスパイウェア注5との戦いが始まっている。バーチャルYouTuberとして生計を立てる新しい職業の登場の裏では、人類の進歩と共に発達してきたリアルな物づくり産業の担い手が減少の一途を辿る。そして、インターネット文明の行く末をSFで知った我々は、それが仮想現実ではなく、リアル社会の結末であるかも知れないということに気付き始めている。
「インターネットは人々を幸せにしているのか!?」を問うとき、質問者はアンケート専用のHPをウェブにアップし、回答者は端末を介して「yes」を送る。

注5

情報搾取を目的としたマルウェア(malicious software:悪意のソフトウェア)の代表として“Scanbox”が挙げられる。ScanboxはJava scriptコードを使った情報収集や分析用のサーバーで構成される。これが仕組まれたウェブサイトにアクセスしたPCのブラウザ上で動作し、ユーザーの入力値やPC環境の情報などが搾取される他、連動した不正送金マルウェアなど、金銭を標的にしたものが増加している。


インターネットに棲む悪魔とは・・・(イメージ)

次号に続く