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ラビットプレス+12月号


言動パターンを学問的に分析すれば(イメージ)

実験心理学を学べば日々の暮らしの中での出来事、ビジネスシーンや学校生活での悩み、後悔なども原因と結果のロジックが見事に解明される。アルフレート・アードラー注1は、社会生活の中における人の悩みは100%対人関係の悩みだと断言する(社会動物としての人間は対人関係の中で存在する)。
さて、先月の寄稿において推測した小池新党(希望の党)の現在はどうなったか。拙者が言い訳を連ねてこじつける必要も無く、ご覧のとおりである。アドラー曰く、社会動物としての政治家の心理から、以後の行動と結果を予測するには難なく、後悔後に立たず、なのである。

今月は師走。12月5日配信と聞いているので、クリスマスにはもう少し時間があるが、比較的お若い購読者の方々(既婚・未婚は問わず)は、特にソワソワ、ウキウキ。しかし、その一方で憂鬱な日々を送っておられる方もいらっしゃるはず。他方、ご年配の諸兄(現役・リタイア組問わず)には、もう何十回と繰り返してきた一年の終わりのこの時期に、光陰矢のごとし注2と述懐し、悔しい思いが蘇ってくる方、満足感や達成感を再び噛みしめる幸福な方、また、来年こそは(毎年思う)と、あと僅かになった2017年のカレンダーを早送りし、心は2018年正月明けを駆けていらっしゃるかも知れない。
今年一年の総決算として、また、これから迎える年末恒例のビッグイベントに合わせた計画について、本編ではオムニバスで皆さんの心の動きを読み解くと共に、反省すべきは反省を、成功させるにはどうすれば良いのかも含め、実験心理学の醍醐味を味わって頂こうと思う。拙者からの、ささやかだが“お値打ち”のクリスマスプレゼントとして受け取って頂ければ幸いである。

注1
アルフレート・アードラー(独音)(アルフレッド・アドラー英音):1870年2月7日~1937年5月28日 オーストリア出身の精神科医、心理学者、社会理論家。ジークムント・フロイトおよびカール・グスタフ・ユングと並んで現代のパーソナリティ理論や心理療法を確立した1人。
出典・ウィキペディア

注2
光陰矢のごとし:月日が経つのは、矢が飛ぶように早いということだが、年齢を重ねるごとに、生きてきた年月を分母とした場合、1年の感覚が年々短く感じるのは拙者だけだろうか。


来年は戌年です!(イメージ)

《2017・会社で、学校で上手くいかなかった貴方へ》
社会動物の定義を引用すれば、集団生活、集団行動、組織行動、社会共同体が前提となる社会生活を営みながら我々は生きている。集団とは、特に目的を同じくしたチームを指すのではなく、社会全体及びその中のコミュニティのことを言う。組織や共同体の意味としては、一人一人が置かれた環境の中での係わりを言う。
個人々々の具体的案件をどうこう言っても始まらない。要は学校であれ、職場であれ、対人関係において上手くゆかず、結果として学業が、仕事が、友人関係や家族関係に何らかの影響が及び、大小それぞれに問題が顕在化してしまった苦い一年を過ごされた方々に対する心理分析である。

~集団の中での人の心理~
人は集団に入るとどのような行動をとるのか。これは心理学の分野で最も研究されてきた行動心理の一つである。一人よりも二人。三人寄れば文殊の知恵など、日本の諺にも比喩されるように、何をするにも独りの考えよりも複数の意見を集約し、よりよい提案として纏めることが大切である、という当たり前と言われそうな論理である。
集団でアイデアを出し合うことによって、相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法として学校教育現場や職場でも採用されて久しい、「ブレインストーミング会議注3方法の検証実験によれば、三人の集団が最も多くのアイデアを生み出すとの報告がなされている。人数が多ければそれだけ分のアイデアが出そうなものだが、実はそうでもないというのだ。「船頭多くして船、山に登る」なんていう諺しかり。しかし、原因はそれだけではない。ビブ・ラタネ(Bibb Latane 1937~米国の社会心理学者)の有名な拍手実験では、6人の集団に対して力いっぱいの拍手を求めたが、力いっぱい拍手をしたのは3人だけであり、残りの3人は明らかに力を抜いた拍手をしたというのだ。興味深くは、手抜きした3人それぞれ、力を抜いたという意識が無いことである。また、マクシミリアン・リンゲルマン(Maximilien Ringelman 1861~1931 ドイツ社会心理学の創始者と呼ばれる)は綱引きを使って集団における“社会的手抜き”の実験を行った。綱を二人で相互に引き合う場合は、それぞれが93%の力を平均で出しているが、三人では85%に落ち、8人では各人平均が49%に手抜きするというのだ。つまり、人は集団になると無意識のうちに力を抜く=いい加減になるということが実証されている(リンゲルマン効果)。これは、老若男女、文化を超えて見られる現象であり、どちらかと言うと集団主義的国家(アジアに多い)よりも個人主義的国家(欧米)に顕著だという。

注3
ブレインストーミング会議:ブレインストーミング会議とは、集団でアイデアを出し合うことによって、相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する会議技法である。議題は予め周知しておく方法と、先入観を与えないよう、その場で資料を配布する方法もある。
参考・ウィキペディア


さて、貴方がたの今年の悩み、後悔には意見の相違や纏まりの薄い組織の中で与えられた責任、その理不尽さ故に口論となったり、分裂してしまったりした結果、友人や職場での関係がギクシャクし、憂鬱な一年を送られた方々。集団行動の中に問題があったというなら、来年は是非『三人』という数をキーワードにして頑張って頂きたい。
心理学では、「希少性価値効果」と呼ばれる現象が実証されている。これは、対象人数に留まらず、対象物の数にも応用される方法であり、人間が集団の中で無意識に抱く「いい加減=手抜き」を抑制する為に適している。例えば生命保険会社の商品マーケティングにおいて多用されている例を紹介すれば、男性専用のがん保険や女性特有の疾病に対応する保険、年齢層を絞った30代からの保険、自営業者だけのために作られた保険などである。これは「ターゲッティング」と呼ばれる手法で、漫然と誰でも広く加入できる保険商品が消費者心理に働かない(まあ、自分には関係ないか…)ことに対し、ターゲットを少数派に敢えて絞り込むことで強く関心を誘う(その層にだけ)方法であり、商品数を増やさなければならないデメリットはあるが、ターゲットに深く浸透する効果はそれを上回るのである。


三人寄れば…(イメージ)

《2017・努力よりも理不尽が厚遇される憂き目にあった方々へ》
正直者は損をする、または、バカを見る、とはよく使われるフレーズである。一方で、「目明き千人盲千人注4」、と言われるように、客観的且つ楽天的な諺も見逃してはならない。
さて、心理学では、「信頼」「安心」を次の様に定義する。
「信頼」とは、相手のことがよく分かっていなくても「付き合っていかなければいけない」という心理状態のことである。他方、「安心」とは、相手のことをよく分かっていて「この人なら自分から(何かを)搾取することはない」と考える心理状態のことである。
日米の高校生に対するアンケート調査では、日本人は他人に対する信頼が低く、安心を求める傾向に在ることがわかっている。これは、社会的不確実性に関する結果であり、集団社会主義を形成する国民に顕著に現れることが知られている。すなわち、個人主義の対極に在る心理である。この傾向から日本では「義理人情」型の集団社会が生まれ、今日に至っている。つまり、初対面の相手より、集団に居る「仲間」を重用し、安心感の上で何事も進めていこうというわけだ。貴方も、そして廻りを見渡しても思い当たることは多いのではないか。例えば、社内で使っているコピー機の新規参入業者のプレゼンには耳を貸さず、明らかに高コストの現行取引先からの提案を毎回受け入れるようなことが。理由は、「長年使っているし、担当者も良く知っているので安心だから」ではないか?
先月、米国ドナルド・トランプ大統領が訪日した。同氏が大統領となって、それまでに参加各国が多くの労を費やしたTPP交渉が、最終段階に来てアメリカが交渉離脱を実行したのも記憶に新しい。しかし、これを心理学者の目線で語れば当然のことと一蹴するであろう。TPP参加の多くはアジアの国々であり、集団社会主義を形成する国家である。個人主義の最たる米国とはそもそも考え方が真逆なのであるから、自由貿易の何たるかは言うに及ばず、信頼関係の下では国際協定など不要なのである。個人主義社会では、その責任は個人に帰属するのであるから、相手を信頼するかどうかに労力を費やすのは当たり前である。これを取引コストという。日本では、どの分野においてもこの取引コストを重要視していない。従って、目に見えない機会利益を失っている現状があるのだ。日本語では、知らない相手と取引することに対して、「思い切りがよい、勇気がある」などと表現するが、本末転倒であり、取引コストを掛ければ信頼関係を構築できるという概念が欠如している表れである。

閑話休題

貴方の所属する集団組織(学校、会社など)で、ろくに仕事も出来ない(一方的な偏見であるかも)、ゴマすり上手な同僚が上席や教師に可愛がられ、地道にコツコツと仕事をこなし、確実に組織の役に立っているはずの人物(それは貴方かも)の評価は常に低く、悶々とした日々を今年一年送って来た、と言われる方。先述した「信頼と安心」の心理メカニズムをご理解頂けただろうか。すなわち、この国の人々というのは、安心感を与えた人間に味方するのだということ。そういう視点で自分の周りを客観視してみなさい。なるほど頷けることばかりではないか。ならば、貴方は(理不尽に怒る方は)どうすべきか。
それは「安心」を周りに与える行動を起こすことしかないのではないか。勿論、いい加減なお調子者になり下がれと言っているのではない。自分を知ってもらう努力をすることである。取引コストを自らが負担して。他人は貴方のために取引コストを掛けることは無い(それが日本人である)。自らの為にコストを負担するのである。自分を知ってもらえれば、周りは貴方に対して安心感を抱くことは実証済みであるから、心配は不要である。「わかってもらえなくてもいいんだ…」などといじけて諦めては何事も進まない。「いっそ自分も理不尽なやつらの仲間に加わろうか」と思ってみても、貴方の性格ではそれも出来まい。
そんな立場に居る人でも、見てくれている人は案外多いものである。「目明き千人」は、一応貴方の見方であることは間違いない。しかし、この千人の過半数は、おそらく貴方と同じ境遇の持ち主であることに注意が必要だ。傷の舐め合いで憂さ晴らしをすることに時間を費やすことは、卒業しなければならない。自分を知ってもらう努力とは、「盲千人」に対するアクションだと思いがちであるが、実は「目明き千人」に対しても必要な努力であることを、お忘れなく。

注4
目明き千人盲千人(めあきせんにんめくらせんにん):世の中には、道理のわかる者もいるが、わからない者もいるということ。それは結局半々で、世の中は保たれていることの例え。差別的用語ではない。


貧乏くじを引くことは宿命?(イメージ)

《2017・恋人募集中の貴方へ クリスマスイヴを幸せな一日とするには》

自分は容姿もそんなに悪くないはず。性格だって。極端にお金が無いわけでもなく、時間だって、それなりに作ることも可能だし、普通に恋愛に向き合っているのにパートナーがこの一年、出来なかった。または、折角上手くいっていたと思っていたら、ある日突然の別れ。自分の何処が悪かったのか。気に入らなかったのか。人の心の移ろいと愛情の儚さに寂しい思いをした貴方。クリスマスは独りぼっちで過ごしますか?

紙面の都合上、個別の恋愛相談は勘弁願い、総じて楽しいクリスマスと年末年始を迎えたいと願う寂しい貴方がたに、合コンでの勝率を格段に引き上げる秘策を伝授しよう。

~その1.三人の法則~
集団行動でも述べたが、やはりマジック3はここでも大切なポイントとなる。人間は集団の大きさによってそれぞれの性格や性分が出やすくなったり、そうでなくなったりする。また、コンパのように飲酒を伴う場合、本性が現れやすくなり、多人数になればなるほど顕著となる。経験者は思い出してみればおわかりだろう。例えば男女それぞれが10人近く集まるコンパでは、自ずと声が大きくなり、羽目の外し方も大胆になってくる。一方で、その雰囲気に乗り切れなかった人の惨めさと辛さは。早く帰りたい!と思った経験のある方も多いのではないか。
また、2対2の見合い風コンパはどうか。ほぼ最後まで対面の相手から目線を外せず、気まずい空気も漂う中、針の筵(むしろ)に座らされた気持ちになった、という貴方、貴女。そこで3対3のコンパを推奨する。三人というコミュニティは意見が最も多く出され、また、纏まり易いということは述べた。これは会議でも、ワークショップでも、コンパでも同じである。対面だけではなく、隣の参加者とも話し易く、同性三人での会話も可能な距離を保つ。相手方からの質問にも間延びせず、飽きられないのも三人ぐらいが適当なのである。よくある血液型性格診断を例に、一人目がA型。二人目がB型だったとしたら、二人目の診断で盛り上がるのは必至だ(B型の方には失礼。科学的根拠はありません)。そして三人目。それが何型であろうとも話は方向性を失わない。A型なら一人目の話とリンクするし、B型ならその続きで矢面にされる。O型が来たなら新しい視点で話が出来るし、AB型となればその場は最高潮を迎えるだろう。そしてその流れをそのままに、今度は相手方陣営に移っていくのである。しかし、これが4人以上だとどうか。もし、同じ血液型が四人目に登場したときは、盛り下がりは目に見えている。時間も掛り過ぎる。様々なシチュエーションを想像してみて欲しい。
かくして、男女各三人対三人のコンパが最も楽しく過ごせる蓋然性があるのである。

~その2.自己紹介と座席位置で決まる成功確率~
男女合コンの多くは、その進行に問題があると拙者は思っている。勿論若人たちから聞き取った内容が情報源だが、概ね最初は向かい合わせの二列が多いそうだ。時間の経過と共に席替えのタイミングを計るらしい。一方で、積極的で場馴れした幹事の下で開かれるコンパは、最初から男女混合で座らせることもあるという。拙者に言わせれば、いずれもNOである。
結論から言えば、後で述べる理由を基に、自己紹介の終わった時に席替えをすべきと考える。
では、その自己紹介のテクニックと座席位置で決まる理由を実験心理学上の理論を根拠に伝授しよう。
人間の脳はコンピュータシステムのように事物特徴をデータベース化して網羅的に把握し、判断基準を抽出しているのでは決してない。人間は主観的に瞬時に、「良い人そう」「嫌な感じ」というような感覚的印象でその全体像を纏めるのである。そして、一旦纏まった結果はそう簡単には覆らないのである。むしろそれが増幅していくことも分かっている。これを心理学では「初頭効果」と呼ぶ。初頭効果は人の「確証バイアス依存」にあることが研究で明らかになっている。確証バイアスとは、自分の正しさを確かめることであり、バイアスとは「間違い」のことである。つまり、自分の正しさを確かめることの間違い、ということになる。何故それが間違いなのか。考えれば分かることだが、物事の確証を得るには、理論上、「反証」の検討も必要であるから、それをせずに第一印象で纏めてしまうことは間違いであるということになる。そこがコンピュータとの決定的な違いである。詳しくは避けるが、自己肯定(自分は正しい)と思いこむ脳のメカニズムに在っては、その確証を肯定する為の材料を探すことに傾注してしまう。所謂粗探しだ。反証である長所やリスペクト出来るところはスル―し、悪印象にはそれが上塗りされるから厄介なのだ。
反面、好印象が初頭効果として現れた場合は、当然逆のパターンに繋がる。結局何を言わんとしているかだが、自己紹介は自分の長所や好印象を与える内容などから先に話すことが非常に大事だということである。日本人は「謙遜」という、他国語では表せない、心の黍(きび)を表現する言葉を好む。美しい言葉の響きであるが、謙遜はTPOを伴うことを忘れてはならない。間違っても合コンの自己紹介で、ネガティブイメージを植え付けるような謙遜はアウトである。ただし、自慢話ばかりの自己顕示と自惚れは逆効果だからご留意を。

そうして、自己紹介で好印象を持ってもらったら席替えをする。自分が好印象を受けた正面に位置を獲ること、と思っている若者は多いが、その逆である。隣に席をとるのですよ!
これはスティンザー効果と呼ばれ、正面の人とは敵対し易く、隣の人とは同調し易いという実験結果に基づいている。心理的には、常に目線に晒される正面より、適当に外すことが出来る隣の席の方がリラックスするからでもあり、実践的にはヒソヒソ話も可能となる。

~その3.成功へのおまけ:ランチョンテクニック~
合コンは、食事メインのお店で行うべし。
米国の心理学者であるグレゴリー・ラズランは、かなり信憑性の薄い内容の論文を、食べ物を食べながら読ませるグループと、何も食べさせずに読ませるグループに分けて実験し、前者がその内容に肯定的な見解を示し、後者は否定的な見解を示したことを実証することで、食事中の情報は好意的に受け取られ易いことを提唱した。これをランチョンテクニックと呼ぶのである。
従って、食事が互いの意見を肯定し合ったり、何でもない内容の話でも、妙に盛り上がったりすることが期待できるので、コンパは酒が主体ではなく、食事が主体の企画がお勧めなのだ。

さて、読者の皆様。イヴまで残り20日を切りました。忘年会などでも気になるお相手がいらっしゃるなら、是非実践してみては如何でしょう。ただし、個人の属性は加味しておりませんので念のため。


MERRY CHRISTMAS & HAPPY NEW YEAR