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女不動産屋 柳本美土里

「今日は寒いわね~」
美土里は口元にあてた掌に息を吹きかけながら、ストーブの火を点けた。
しばらくすると、丸ストーブの上に置いたヤカンから、温かさを感じさせる蒸気がうっすらと上がってきた。
「そういえば昨日の夜、何台も消防車のサイレンが鳴り響いていたわね。河野くん、聞こえてた?」
河野は、カウンターテーブルの上の物件資料を整理しながら答えた。
「ええ、かなり大きな火事だったんでしょうか?救急車も走っているようでしたね」
「そうね、年の瀬も迫ってから火事なんて嫌よね~」
「それでも、寒くなってきたこの時期は火事が多いっていいますよね」
「たしかに、暖房器具を使い出して、火の不始末とかで、どこかに燃え移ったりすることで、火災が増えるようね。うちも気をつけないと」
美土里は、勢いを増したやかんの蒸気に目をやった。

電話が鳴ったのは、窓に結露が出始めた頃だった。
「ああ、美土里ちゃんか?実はな、うちの山元町のアパートが火事にあってな、全焼になったんや」
電話の主は、先代からの付き合いがある大家さんで、市内にいくつもアパートを持っている山下さんだ。
「えっ!?全焼って?もしかして、昨日の夜の消防車のサイレンって、山下さんとこのアパートだったんですか?」
「そうみたいやな、とりあえず美土里ちゃんには言うておいた方がええと思って」
いつも大きな声で話す山下さんは、昨日は眠れなかったのだろうか?いつになく、声が沈んでいた。
「それで、怪我とかされた方はおられたんですか?」
少し言葉に詰まったようにみえたが、山下さんは言葉を繋いだ。
「ああ、火元とみられる部屋の多田さんという老夫婦が亡くなって、その孫娘がちょっと火傷を負ったみたいや」

山元町の山下さんのところのアパートに住む老夫婦は、たしか多田さんという名前だったと思う。
ご主人は身体の調子が悪く、ほとんど寝たきりで、奥さんの方も、脚が悪いようだった。
数年前に、娘さんが旦那さんと離婚して、高校生の子どもを連れて戻ってきたときには、娘さんには申し訳ないけれど、老夫婦の面倒をみてくれる家族ができたと胸を撫で下ろしたことを美土里は覚えている。

「孫娘というと、20歳そこそこのお嬢さんですよね?」
「ああ、そうや、美土里ちゃん知ってるんか?」
「はい、数年前にお嬢さんが多田さんのところに戻って来られたときに、同居家族が増えたからって、多田さんから連絡をいただいたんです。その後、他の部屋の改装工事の際にアパートへ伺ったとき、制服の孫娘さんにお会いしたことがあるんですよ」
「で、多田さんのお嬢さんはお怪我はなかったんですか?」
「ああ、娘は今は住んでないようや。多田さんたちと一緒に暮らしていた孫娘が少し怪我したようやが」
「孫娘さんの怪我の様子は、どうなんですか?」
「ちょっと腕に火傷をしたみたいなんやけど、そっちは大したことはなさそうやから安心してるんや」
「多田さんのお嬢さんは、どこに行かれたんでしょうね?」
「それがやな、多田さんの娘は、何年も前から、あのアパートには住んでないらしいんや。噂やけど、勤めてた夜の店でお客さんと仲良うなって、2人でどこかに駆け落ちしたって・・・なんでも、男の方には家庭があって、その奥さんが別れ話に応じへんかったという話や」
山下さんは、苦々しそうに言った。
ということは、老夫婦の面倒は、孫娘が独りでみていたということか。
多田さん夫婦が亡くなったことには胸が痛んだが、美土里には、その孫娘の方が気に掛かった。
祖父と祖母を亡くし母親が失踪してしまった彼女に、これから頼るあてはあるのだろうか?

美土里が、ぼんやりと想像していると、山下の声が受話器から響いた。
「とりあえず、焼け出された人たちは、他のアパートの空き部屋に入ってもらうから、それらの部屋の賃貸募集を暫く止めておいてや。どのアパートの部屋かは後でFAXしとくわ。それと、火災保険の手続きとかも、また必要となると思うから、美土里ちゃん、頼むわな」
さすが、地元の顔役で尽力している山下さんだ、手配が早いだけでなく器も大きい。
「はい、わかりました。もし、アパートの人たちが、しばらくの間、他の部屋に住むことになるなら、後でトラブルにならないように賃貸借契約をしないといけませんね」
「まあ、身寄りのある人は、どこか頼って行くかも知れんし、そっちは直ぐでなくても構わへんから。いろいろ面倒かけるけど、頼むわな」
「はい、承知しました」
美土里は丁寧に受話器を戻した。

美土里は、パソコンで間取図を作っていた河野を誘って、全焼になったというアパートに行くことにした。
大通りを東に折れ、しばらく行くと、綺麗に並べられた住宅の列を抜け、田畑と住宅がオセロのように交互に並べられた通りに出た。
そんなロケーションに山元町の山下のアパートがある。
はずだったが、遠くから見ても、あるはずのその部分がすっぽりと抜けていて、ずっと向こうの家が小さく見えるだけだ。
現場の前に着き、車のドアを開けたとたんに、焼け跡の焦げた生々しい臭いが鼻腔に流れ込んできた。
アパートがあった場所では、消防署の職員なのだろう、ヘルメットを被った数人の人が建物内で写真を撮ったりしていた。
「完全に焼け落ちていますね」
先に口を開いたのは河野だ。
建物は数本の柱を残して、殆ど原型をとどめていない。
焦げた匂いは、車を降りたときよりも、さらに強まっていた。
「ほんと、全焼だわ」
美土里と河野は、被災者の人たちの苦しみを想い胸が痛んだ。

大家の山下さんが柳本不動産にやってきたのは、それから3日後だった。
「どうですか?被災者の方は落ち着かれましたか?」
「まあ、いきなり全ての家財が無くなったんやから、そりゃ大変やろうけど、とりあえずうちのアパートの空いている部屋に入ってもらったから、住む場所だけは確保できたってとこやろうな」
「そやけど、この寒さやろ?エアコンの設置をしてない部屋の人は凍えてしまうやろうから、電気屋さんに頼んで直ぐにつけてもろうたんや」
「そりゃ山下さん、かなりの出費やったん違いますか?」
驚いた美土里は、つい口にした。
「いや、エアコン付の部屋として、次の入居者募集のときにはアピールできるやろ?」
山下は、ニンマリと笑った。
「ところで火災保険の話ですが、結局火元はどこだったんですか?」
「消防署の結論としては、火元はやっぱり亡くなった多田さんのところやったみたいやな。なんでもストーブの辺りから引火したんやないかって」
「そうですか、そうなると先ずは多田さんに入ってもらってる入居者の火災保険で損害を賄ってもらって、不足分を山下さんが掛けられている保険会社に請求するということになりそうですね」
「そっちの方は、どうしたらええかわからへんから、美土里ちゃんにお願いして任すわ」
「それよりも心配なのが、孫娘のことなんや」
「入居者名簿では、たしか名前を多田万理と聞いていますけど、怪我は大したことなかったんじゃないんですか?」
山下は顔をしかめた。
火傷の手当ては済み、1ヶ月もすれば元通りになるとのことだが、目の前で祖父母が焼かれてしまったことがショックだったのだろう、そのせいで以前の記憶をなくしているという。
「記憶喪失ですか?」
「ああ、医者が言うには、一時的なもので、しばらくすると正常に戻るかもしれんと言うんやけど、もしかすると、ずっとこのまま記憶が戻らないこともあるそうなんや」
美土里と河野は息を飲んだ。

「祖父母が亡くなって、母親が行方不明、本人が記憶喪失なんやから、頼れるあてがあるのかどうかもわからへんのや」
山下は視線を落とした。
「山下さん、万理さんの縁戚関係を調べるのなら、戸籍を調べればわかると思いますよ、別れた父親のことも」
美土里は、山下を励まそうとそう言った途端、そうすることが記憶喪失になっている万理にとって良いことなのかどうか疑問に思い、言葉を足した。
「ただ、それが万理さんにとって幸せかどうかはわかりませんよね。祖父母の介護を放棄して出て行った母親や、どういう理由で別れることになったかわからない父親を探し出し、万理さんを任せてしまうのは」
「いっそのこと、記憶喪失のまま、過去を忘れて新しく自分の人生を歩んだ方が、本人にとっては幸せかもしれませんよね?」
「まあ、美土里ちゃんの言うこともわからんでもないけど、そこまで他人が踏み込んでもええもんやろか?」
山下の言うことも、もっともなことに思える。
他人が、人の幸せを勝手に判断するなんていうのは、おこがましいにも程がある。
それでも・・・
自分の名前も思い出せないようだったので、山下は本人に”多田万理”という名前だけは教えたそうだ。
火事以前のことは全く覚えていないようだが、普通に会話もできるし、読み書きもできるらしい。
「とりあえず、専門家にお願いして、万理さんの縁戚関係を調べてみようかと思います。本人が記憶を取り戻すならともかく、その結果が出るまでは、こちらから多くの情報を入れない方がいいんじゃないでしょうか?」
山下も美土里の提案に同意した。まずは調べてみようと。

意外にも早くに専門家からの調査報告が届いた。
多田万理の母方、多田家については、万理の母親は一人娘だったらしく、万理から見た伯父や叔母、従兄妹などはいないそうだ。
祖父母にはそれぞれ兄弟姉妹が数人いたが、その全員が亡くなっており、その息子や娘、つまり万理の母親の従兄妹にあたる人が数人、いるにはいるのだが、ほとんどやり取りはない。
一方、万理の父親にあたるのが、徳田勝美という人物だ。
徳田の両親は、彼が幼い頃に離婚。
彼は父親に引き取られたが、中学を卒業すると家出。
非行少年グループに所属して、あらゆる犯罪に手を染めたそうだ。
20歳を過ぎた頃に、建築現場などで働くようになり、そのころ知り合ったのが万理の母親だった。
真面目に働いていたと思われた勝美だったが、酒癖が悪く、何度も傷害事件を起こした挙句、刑務所への出入りを繰り返すようになる。
万理の母親と離婚したのも、勝美の服役中だったようだ。
そんな勝美のことなので、親戚とは絶縁状態という。

「う~ん、いくらなんでも、これは話せないわな~」
アパートの大家の山下は、頭を抱えた。
「よくこんな環境で、万理ちゃんは、あんなに朗らかな笑顔ができたわね・・・」
「そうやな、笑顔を心がけることで、自分の中の辛さと戦っていたのかもしれんわな」
2人は黙った。
温かいお茶を口に運ぶと美土里は唇を開いた。
「ところで、万理ちゃんは今どうしてるんですか?」
山下は顔を上げた。
「ああ、それは心配いらん。彼女も他の被災者と同じく、わしの他のアパートで空いている部屋に住んでもらってるから・・・でも、いつまでも、ああしている訳にはいかんやろ?できたら仕事に就くか、誰かいい男がいたら結婚でもしてくれたらええんやけど」
「万理ちゃんには、結婚を考えられるような彼氏がいたんですか?」
「いや、火事からこれだけ経っても誰も万理を訪ねて来ないってことは、そういう男はおらんのやろな」
美土里は河野に目配せをし、河野は小さく頷いた。
「山下さん、良かったら万理ちゃんに話して欲しいことがあるんですけど・・・」
「話?」
「はい、柳本不動産で事務員を募集しているから、良かったら応募してみないかって」
「美土里ちゃんとこで、万理を雇うてくれるいうんか?」
山下は驚いて目を丸くして美土里の顔を見た。
「雇ってくれるなんて、そんな偉そうな話じゃないんですよ。うちも忙しくなってきて、事務員がいるな~って河野とも話をしていたところなんです。だから、もし万理ちゃんさえ良かったら、うちで働いてくれへんかな~と思って・・・万理ちゃんのあの笑顔は、客商売のうちでは大切な素質やと思うし」
「そうか、美土里ちゃんところやったら安心して紹介できるわ。ありがとうな」
山下は嬉しそうに手を合わせた。
「労働条件は良いかどうかわかりませんけど、山下さんみたいな、ええお客さんが付いてもらってるから、事務員の1人くらいは何とかなるでしょう」
美土里は笑いながら小さく舌を出し、山下は額に手を当てて笑った。

「初めまして、多田万理と申します。大家の山下さんのご紹介で、お伺いしました」
スーツ姿で柳本不動産の玄関口に立った万理は、はきはきとした声で挨拶をした。
買ったばかりのスーツなのだろう、紺色の布地は光沢が見られる。
「どうぞ、こちらへ座って」
美土里は万理を応接テーブルへ案内し、河野を呼び寄せると、3人はテーブルを囲んだ。
「山下さんから、火事で怪我をしたって聞いたけど、身体の具合は大丈夫?」
「はい、まだ火傷の跡は残っていますが、もう痛みも取れました」
そう言いながら万理は、自分の左腕をさすった。
「そう、それは良かったわ。うちは、見ての通り不動産業者なので、お客さんからの問い合わせの電話やら、お客さんが来られたときにお茶を出したりの対応、それから資料の整理をしたり、いろいろな雑用をしてもらうことになるんだけど、大丈夫?」
美土里は、俯いている万理の顔を覗きこんだ。
「あの・・・、その前に知っておいていただきたいことがあるんですけど・・・」
美土里は、万理が記憶喪失だということを言おうとしているのを察知し、先に言葉にした。
「それって、あなたが過去の記憶がなくなっているって話かしら?それなら既に聞いているから気にしなくても大丈夫よ」
「そうでしたか!」
顔を上げた万理は、満面に安堵の色を示していた。
「はい、過去のことはよく覚えていないんですけど、日常生活は普通に送れますから、教えていただければ仕事もできると思います。いえ、是非頑張ってやっていきたいんです」
「そう、そういう前向きな気持ちを持っているのなら大丈夫ね」
続けて美土里は、雇用条件の説明をした。
「こういう条件なんだけど、良かったら明日からでも来てちょうだい」
「はい、ありがとうございます。じゃあ、明日からお伺いさせていただきます」
まだ幼さを残している丸顔の万理は、満面の笑顔を輝かせて挨拶を済ますと、柳本不動産を後にした。
「どう?河野くん」
「ええ、素敵なお嬢さんですね。明日からの勤務が楽しみになります」
「それって、私とじゃあ楽しくないってこと?」
美土里は横目で河野を睨み、そして笑った。
「そうね、仕事に馴染んでくれたらいいんだけどね」
美土里は、人を育てる経営者の顔になっていた。

「おはようございます!」
元気のいい声で、翌日から万理が出社してきた。
最初は、戸惑うことも多いようだったが、少しずつ仕事も覚え、同業者やお客様からの電話にも自然と応対できるようになってきた。
そんな初々しい日々が2週間ほど続いた頃だった。
柳本不動産に、1人の中年男性がやってきたのは。

数日前に不動産を売りたいという電話があり、それでは事務所へ来てくださいということになり、その当日となった。
やってきた男の年齢は、40代後半というところか。
短めの髪をオールバックに流し、きちんとしたグレーの三つ揃えのスーツが筋肉質の胸板に似合い、淡いブルーのネクタイは、どこかの会社の管理職という雰囲気の男だ。
差し出した名刺には、貿易会社の部長の肩書きがあった。
「こちらの物件なのですが」
そう言ってテーブルに差し出したのは、土地の公図と登記簿謄本だ。
男が言うには、来月から海外へ長期出張に行くことになり、いつ帰って来られるかもわからないから、相場よりも多少安い値段でもいいので買い取って欲しいという。
美土里は、登記簿謄本の名前と運転免許証の名前を照らし合わせ、一致しているのを確認した。
物件の査定をして買取り値段を出すのに1週間欲しい旨を伝えると、男は「他の不動産業者にも声を掛けているので、できるだけ早くに結果が欲しい」と言って帰っていった。
早速、美土里は現地確認へ行き、役所で物件調査を行い、インターネットから資料を取り出し、査定額を計算し始めた。
そんな美土里へ、万理はお茶を運び、デスクの脇に置いた。
「ありがとう。そろそろ時間でしょ、帰っていいわよ」
そう言う美土里の傍に立ったまま、万理が何か言いたそうにしていることに美土里は気付いた。
「どうしたの?万理ちゃん、何か話でもあるの?」
少しためらうような仕草をしたあと、小さな声で話し出した。
「あの~、差し出がましいようですけど、その物件の買取りはやめた方がいいと思うんです」
「え?どうして?」
美土里は、振り返った。
「いえ、はっきりとした理由がある訳じゃないんですけど、何となく良くないように思えるんです」
直感なのか?
それにしても、不動産のことを何も知らない入りたての万理が、物件の買取りをやめた方がいいなんて言うのは、よほど気になる何かがあるのだろうか?
「何が引っかかっているの?物件について?それとも売主について?」
「はい、売主です」
万理は、売主に問題があると、はっきりと言った
「万理ちゃん、心配してくれてありがとう。じゃあ、慎重に調べるようにするわね」

気になった美土里は、査定の途中経過を入れるという理由をつくり、男の名刺に記載されている会社へ電話を入れた。
男は業務で外出中らしい。
ということは、勤務実態はあるのか。
では、所有名義の方をあたってみよう。
美土里は、登記簿に記載された売主の住所の電話番号を、一か八か電話帳検索で調べてみた。
最近は、個人宅の電話番号を電話帳に掲載していない人が多く、住所だけで電話番号がわかるのは稀であるのだが・・・。
ビンゴ!この登記簿と同じ住所と名前で電話番号が出てきた。
美土里は、受話器を上げた。
繋がった相手先に、こちらは不動産業者で土地の買取り依頼があったこと、登記簿の所在地の土地を持っているか?そして、登記名義人は、貿易会社に勤めているのか尋ねてみた。
「すんません、お宅さんが何を言うてはるのか、ようわかりませんわ。その土地は、うちの土地やけども、名義人のお爺さんは老人ホームへ入っていて、仕事なんてずっと長いことしてませんし、どちらかとの間違いやおまへんか?」
相手方の奥さんか、お嬢さんらしい女性からはそういう返事だった。
とすると、先日やってきたのは詐欺師?

「社長、それはちょっと話ができすぎですよね。来月海外へ赴任して、いつ帰ってくるのかわからないから、今のうちに土地を買い取って欲しいなんて」
河野は、首を傾げながら言った。
「だって、登記名義人と免許証の名前も一緒だったのよ、きちんとした感じの人だったし、まさか詐欺師だなんて思わないわよ」
美土里は、頬を膨らませた。
「でも、どうして万理ちゃんは、その男が詐欺師だってわかったんだろ?」
「そう、それよね。特に理由はないんだけど、直感がしたって。もしかして、万理ちゃんって、そういう能力があるのかも?」
「さあ、それはどうなんでしょうね。単に勘が鋭いってことじゃないんですか?」
科学的根拠に基づかないものを全く信用しようとしない河野は、あきれたように鼻で笑い飛ばした。

翌日、男の会社に再度電話を掛けても繋がらず、それっきり男からの連絡も途絶えた。
そんな輩だから、どこかで捕まったか、悪事がばれて逃げているのかもしれない。
勘なのか?能力なのか?
トラブルを未然に防いだ万理の力に、ぼんやりと不思議なものを感じながら、美土里は独りになった事務所で、ストーブに手を近づけて温めた。(完)

このドラマはフィクションであり、実在の団体や個人とは何の関係もありませんので、ご承知ください。