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ラビットプレス+1月号


平成28年税制改正大綱案が出ました!(宮沢税調会長・共同通信)

読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。旧年中はラビットプレスプラスをご愛顧、ご愛読頂きましてまことにありがとうございます。
本年も変わらぬご愛顧、ご支援を宜しくお願い致します。By ビビット^^

さて、皆さんは今年をどのような年にしたいとお考えでしょうか?又、色々な目標や目的を持って、今年こそ!宣言をなされた方も沢山いらっしゃると思います。
お国の方に目を向ければ、昨年暮れからにわかに忙しくなってきた政府内の消費税10%に向けた動き、つまり今夏の参議院選挙をどう乗り切るかが焦点の自公連立にあって、公明党の選挙公約である軽減税率導入に対する駆け引きと自民党内の不協和音。野党はとくれば、維新の党と民主党の変な連携。もっと変を通り越した民主・共産の合議体構想なんて言うのも真剣に検討されていたとは驚きだ。
大阪では、橋下徹前市長が任期満了(12月18日)で退任し、自らの政治家人生に“一応”終止符を打った。しかし、改めて大阪維新の会は国政政党として名乗りを揚げ、同様に今夏の参議院選挙に挑む。
とにかく選挙と組織に固執する政治の実態は、国民無視をモノともせず、今年も永田町の春を迎えている。


今年はよい年になりそ~(イメージ)


我々国民にすれば、泣いても笑ってもお国の決めた通りに暮らしていかざるを得ないのであって、パンパンに膨れた小銭入れから、あっという間に1円玉、5円玉、10円玉はレジスターに吸い込まれ、消費税8%の申し子にもようやく慣れてきたこの頃なのだが、来年の春にはキッチリ端数の出ない税率適用が待っているのだから、何とも愛おしい1円玉達なのである。

平成28年度税制改正大綱案の概要
自公両党は去る12月10日、それぞれの税制調査会を開いたうえで、消費税の軽減税率制度を除き、平成28年度税制改正大綱を了承した。法人税の実効税率を現在の32.11%から来年度29.97%に引き下げる(法人実効税率は、当初の方針より「20%」台への引き下げを1年前倒しする。平成30年度には税率を29.74%へ引き下げることも明記し、名目国内総生産(GDP)600兆円の大台達成に向け、企業の賃上げや設備投資の拡大を狙う)ことを盛り込むなど、企業の活性化に力点を置いたのが特徴。自公両党の幹事長による協議を経て、軽減税率の合意内容を追加し、その上で与党税制改正大綱を決定する予定だ。


爆買い推奨!(資料:産経新聞社)


外貨獲得策としては、訪日客が消費税免税を受けられる一般物品の最低販売額を1万円超から5千円以上に基準を下げ、訪日客による消費拡大の恩恵を幅広く受けられるようにする一方、29年4月に廃止する自動車取得税の代わりに導入予定の燃費性能に応じた自動車新税は、取得税より負担を総額で200億円軽くする(消費税再増税後に予想される新車販売の低迷などに配慮)など、消費の下支え策を講じる。
又、成長戦略の目玉と位置付けるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)関連では、条約の発効に備えて、農地集約促進課税の強化と軽減措置を交互にそれぞれ設ける。地方の活性化に向けては、財政的に裕福な自治体から経済力の弱い自治体に交付金を再配分する仕組みを拡充する他、地方の各自治体への寄付を促す「企業版ふるさと納税」も創設することとする。

(不動産、住宅関連)
不動産、住宅関連では、住宅改修減税に基づく3世代同居&空き家売却を後押しする方向で調整。子育て支援に繋がる3世代同居を目的とした住宅の改修工事費用について所得税を軽減する。3世代同居を目的にキッチンや浴室、トイレ、玄関などを2ヶ所以上増設した場合、工事費用のローン(年末残高1000万円以下のリフォーム等ローンのうち上限250万円部分)残高の2%分(その他の工事費充当額は1%)を最大5年間、所得税額から控除注1し、世代間の助け合いで子育て負担を緩和する狙いだ。

注1 現金で支払う場合は、改修内容に応じた標準的な工事費用に基づき、10%(最大25万円)をその年の所得税額から一括控除。同居世帯に中学生以下の子供がいることが条件で、住宅ローン減税との併用はできない。

又、昨年急浮上した空き家・空き地問題の改善に向け、親等から相続した家屋を売却(家屋を解体して更地で売却した場合も含む)した場合、譲渡益にかかる所得税を軽減する新たな特例を設ける。対象は、昭和56年5月31日以前に建てられ、相続後に賃貸などをせずに空き家で放置していることが条件。平成31年末までに譲渡した場合、譲渡所得から3千万円を控除できる(ただし、売却価格1億円以下)など、主に少子化子育て対策、空き家対策に関連した改正内容となる。


相続はしたものの…(大久保恭子著・Amazon.com)


一方、厳しい財政事情のなかで「財源なき減税」を重ねては国民の理解が得られないとし、減税財源として企業規模に応じた外形標準課税注2の拡大や、設備投資減税の廃止も追加した。設備投資減税注3は2016年度末で廃止し、追加の減税財源とする。

注2 事業所の床面積や従業員数、資本金等及び付加価値など外観から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額を算定する課税方式。そもそも法人事業税は、企業活動を行うにあたって地方自治体から各種の行政サービスの提供を受けているのであるから、これに必要な経費を分担すべきという考え方にもとづく税です。必要な経費の分担という意味において、所得のみを基準とする従来の方式には問題があり、法人の事業の規模ないし活動量を基準に課税するというのが外形標準課税です。

注3 質の高い設備の投資について、即時償却又は最大5%の税額控除が適用出来る税制措置です。

軽減税率を巡る与党の内紛
消費税再増税と同時導入する軽減税率をめぐり、安倍首相が谷垣幹事長ら自民党幹部と会談した11月24日の朝。会談を知った菅官房長官は、思わず「オレに知らせないで総理と会うとはどういうことだ!!」と声を荒らげた。さらに、同席した宮沢洋一税調会長が記者団に「首相は『一体改革で捻出できる4千億円の枠内』に理解を示した」と説明したことを知り、菅氏はさらに激怒。約2時間後の記者会見では「私は『枠内』とは聞いていない!」と異例ともいえる打ち消しに出た。さらに、菅氏ら官邸サイドは財務省に対し、4千億円の1.5倍となる6千億円の財源を確保するよう厳命。それに留まらず、財務省の田中一穂次官を議員会館の自室に呼び、「対象品目を広げられるよう、財源を探してほしい」と重ねて指示。田中氏が4千億円以上の支出に難色を示すと、「財務省は出来ないとしか言わない」と協議を僅か5分で打ち切り、田中氏を退席させた後、田中氏と同省の佐藤慎一主税局長に「官邸への出入り禁止」を通告。周辺には軽減税率制度が整わなければ29年4月の消費税率10%への増税を見送る可能性を示唆する発言を繰り返すようになる(以上産経新聞報道・平成27年12月11日)。


首相官邸(イメージ画像)


安全保障法案で協力した報いがこれか??これでは選挙協力も出来ない…」自民党菅官房長官に、親交のある公明党幹部から一通の手紙が届いたのは10月の初め。29年4月の消費税増税の一部を事後に還付するという「財務省案」を批判し、公明党の意向を無視してこれを進めれば、連立政権に亀裂が生じかねないと警告する内容だった。
軽減税率は、公明党が26年の衆議院選で「今こそ実現を」と訴えた看板政策。文面には、増税に伴う痛税感が和らげられなければ、来夏の参院選で「公約違反」との批判を招き、党の信頼が失墜しかねないとの危機感がにじんでいたという。「雰囲気は厳しい。なめてかかってはいけない」。政権安定のため公明党の役割を重視する菅氏は、同党の本気度を見て取った。手紙の送り主にすぐさま電話で「おっしゃる通りだ」と答え、公明党に最大限配慮する意向を伝えた。軽減税率導入に向けた協議が本格化する直前のタイミングで、「自民党最大の聖域」とされてきた党税制調査会の野田毅会長交代が一挙に行われたのは首相官邸の強い意向によるものだった。

10月14日、安倍首相は、宮沢税制調査会長を首相官邸に呼び、29年4月の消費税増税と同時の軽減税率導入を検討するよう指示。還付型の財務省案を葬り去った。
その後も軽減税率の制度設計に関する自民、公明両党の協議は、財源に直結する対象品目の線引きをめぐって真っ向から対立した。


自民党と公明党の軽減税率を巡る攻防(イメージ・共同通信)


生鮮食品に限定して財源を4千億円程度にとどめたい自民党と、加工食品にまで広げて1兆円規模としたい公明党が共に譲らなかった。そのような中、財務相経験者の谷垣氏と財務省の緊密な連携ぶりが鮮明となってきた。11月下旬。東南アジア歴訪中の首相に谷垣氏から「帰国したらお会いしたい」と連絡が入った。同24日、自民党本部4階の応接室に入った安倍首相は驚いた。谷垣氏の傍らには、財務省幹部が控えていたのだ。財務省は軽減税率の財源について、社会保障関連の自己負担額を抑える「総合合算制度」の実施見送りで浮く4千億円の範囲内に収めることに固執し、財源を確保するために社会保障を削るのは「本末転倒」(財務省幹部)との理屈からだった。
谷垣氏は会談後の記者会見で、「首相から財源は4千億円と指示はあったか」と問われると、「基本的にそこは首相もそうお考えだと思う」と答えた。財務省の主張に沿った発言だったが、「谷垣氏は財務省と一体だ」と公明党が反発すると、菅氏も会見で「首相は具体的な数字は言っていない」と、冒頭の火消し発言に繋がった。
当初予定された与党税制改正大綱の取りまとめ期限を翌日に控えた9日。首相は事態打開に動いた。官邸で菅氏とともに1時間半近くにわたって谷垣氏を説得し、最後は「協議が決裂したらまずい」と「引導」を渡した。公明党が求める加工食品まで対象品目を広げる流れを水面下でつくってきた自民党の二階総務会長は10日の記者会見で、「公明党に連立を組んで一緒にやっていきましょうと誘ったのは自民党だ」と語り、公明党への配慮は当然だと指摘した。「負けだ。(公明党案の)丸のみだ」。(財務省幹部)(以上時事通信報道・平成27年12月12日)。


どうだ!参ったか!(イメージ・共同通信)


自民党税制調査会の落日
旧自民党政権時代、税制改正の主導権を実質的に握っていたのは自民党税制調査会で、特に「インナー」と呼ばれる非公式の幹部会が決定権を掌握しており、「税制は民主主義の原点であり、議員以外には触らせない」(元税調幹部)として政府にも強い権限を保っていた。例えば、平成元年の消費税率「3%」導入は、「ミスター税調」こと山中貞則税調会長(当時)が決定。「5%」を狙った宮沢喜一蔵相(当時)が訪ねた際に、「裁定の中身は言えない」と突っぱねた逸話が残る。かつて税調会長は「自分は出向かず、首相を自民党本部に呼びつける」(党幹部)と言われるほどの権勢を振るった。
野田氏は旧大蔵省出身で、党所属議員では最多の15回もの当選回数を誇り、インナーの党勢幹部が税制全般を取り仕切ってきた税調を象徴するような人物ともいえる。今回の野田氏の更迭劇は、党より官邸の影響力が強い「政高党低」を決定づけたといえそうだ。


(資料:毎日新聞社)


どうなる軽減税率
消費税の軽減税率を巡って自民・公明両党の幹事長は、焦点となっていた対象品目について、軽減税率の導入時は「外食」を除いた、「生鮮食品」と「加工食品」とすることで合意した(12月12日)。自民党は11日、焦点となっている対象品目について、「外食」まで含めた「酒類を除く飲食料品」とすることを提案し、「生鮮食品」に「加工食品」も加えることでは一致したが、「外食」の取り扱いは結論が出なかった(12日)。
自民党の谷垣幹事長は12日、公明党との幹事長間協議に先立って、午後、国会近くのホテルで麻生副総理兼財務大臣と会談し、「外食」を含めた場合には必要となる財源が1兆3千億円に上ることを踏まえ、財源の確保に理解を求めたが、麻生副総理は、「厳しい財政事情を考慮する必要がある」として、容認できないという考えを伝えた。これを受けて、谷垣氏は同日夜、公明党の井上幹事長らと改めて協議した結果、軽減税率の導入時の対象品目は、「外食」を除いた、「生鮮食品」と「加工食品」とすることで合意。そして、必要と見込まれる1兆円の財源を巡っては、両党が安定的な恒久財源の確保に責任を持って対応することで合意した(NHK報道)。
公明党は予てから公約において、「コンビニの棚に並ぶ商品に適用(軽減税率を)しなければ意味がない」(公明党幹部)と主張してきた。結果として今夏の参議院選挙での3分の2議席獲得の壁が自民党にとって大きく立ちはだかり、公明党の全面勝利という形で決着となった。


(資料:読売新聞社・東京新聞社)

<執筆日:2015.12/12>