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地震だけじゃない!日本は火山国…噴火予知は出来ないのか?


木曽の御嶽山噴火は予知出来ていた?(共同通信)

9月27日、長野県と岐阜県の県境にそびえる御嶽山(3067m)が噴火した。気象庁によると、27日午前11時53分頃と、午後1時59分の2回、噴火を確認した。
中部地方整備局が設置しているカメラで確認したところ、南側の斜面を噴煙が流れ、3kmを越えるのが観測された。
この噴火で、10月4日現在死者47名、行方不明16名を数え、火山災害史上最悪の惨事となった。


休火山という定義はすでに無い(イメージ:富士山)

平成3年6月3日、長崎県雲仙普賢岳が噴火。午後4時8分(気象庁記録)、大規模な火砕流が発生。同年5月24日に初めて発生した小規模な火砕流や、溶岩ドームの取材に訪れていた多くの報道陣や地質、火山学者などが山と火砕流を正面から捉えることが出来る定点に集まっており、死者行方不明者併せて43名の犠牲を伴う大惨事となった。


火砕流の継続的な映像としては世界初(雲仙岳災害記念館)

阪神淡路、東日本大震災と平成の自然災害が立て続けに発生し、間もなく発生が確実視されている東海・東南海・南海地震に対する備えが叫ばれている中、我が国が直面する自然災害は地震だけでは無い。台風、豪雨、更には竜巻なども近年日本各地で大規模な被害を及ぼし、災害に対する意識は国民の日常に根づいている。しかし、火山の噴火という自然の営みについては、活動が活発になっている火山の周辺に居住する住人や自治体以外、どれほどの国民が危機管理を行っているのであろうか。
日本は火山国である、というのは小学校の社会科で学習済みであるはずだが、登山家や趣味の範囲において山へ向かう行楽客にその意識は薄く、何時のころまでかははっきりしないが、今50歳代以降の日本国民であれば死火山、休火山として分類された比較的噴火の可能性が薄いという定義の下で、地元の山を眺めた記憶もあろう。しかし、火山活動の周期は人間の短い物差しで収まる話ではなく、今では火山活動の記録が有る山は全て活火山として定義され、過去1万年間の噴火履歴で活火山を定義するのが適当であるとの認識が国際的にも一般的になりつつあることから、平成15年1月に火山噴火予知連絡会が「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義し直した結果 当初、活火山の数は108、平成23年にはさらに2火山が選定追加され、現在の活火山の数は全国で110となっている(気象庁)。

今月のコラムは、先日の御嶽山も含まれている110の活火山に焦点を当て、今後における噴火の危険性が高いと推測される火山を絞り込むことに挑戦する。

【110の活火山とその分布】
火山噴火予知計画(文部省測地学審議会(現文部科学省科学技術・学術審議会測地学分科会)の建議)により、関係機関の研究及び業務に関する成果及び情報の交換、火山現象についての総合的判断を行うこと等を目的として、昭和49年に火山噴火予知連絡会(初代会長:永田武東京大学名誉教授)が設置された(気象庁HP)。
気象庁では昭和35年以降からすでに噴火の記録のある火山をすべて活火山と呼んでいた(気象庁職員の為の火山観測指針:すでに富士山も活火山に分類)が、昭和50年には火山噴火予知連絡会が「噴火の記録のある火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義して77火山を選定した(77火山は主として噴火記録がある火山が選定。しかし、噴火記録の有無は人為的な要素や歴史記録に影響されることから、近年、火山噴出物の調査を参考に比較的新しい噴火の証拠が発見されることも多く、平成3年には、火山噴火予知連絡会が活火山を「過去およそ2000年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」と定め、83火山を選定し、平成8年にはさらに3火山が追加され、活火山の数を86とした。そして、近年の火山学の発展に伴い、平成15年に火山噴火予知連絡会では「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義し直したことから、現在110となっている)。


我が国の活火山分布図(火山噴火予知連絡会:気象庁)

【要監視、観測体制整備火山47】
政府は、平成13年に社会基盤分野推進戦略案を発表し、重点領域における研究開発5カ年計画の中に異常自然現象発生メカニズムの解明に向けた研究を推進することを挙げていた。そこには、強震動、局地豪雨と並び要監視火山が対象とされており、予測の信頼性向上に研究開発を行ってきた。

火山噴火予知連絡会議では、平成15年1月に火山活動度による活火山の分類を発表し、現在も110の火山をA~C及び対象外にランク付けしているが、あくまで火山学的に活動度合いの高いものから順に分類しているもので、気象庁は、今後の噴火の可能性や社会的影響を考慮していないデータであるとして監視観測等には採用していない。

47火山における防災対策の一覧は以下のとおりである。
資料:日刊ゲンダイ

【火山防災情報の改善…噴火警戒レベル】
平成12年~13年、富士山で深部低周波地震が多発した。深部低周波地震はそれまでも確認されていた現象ではあったが、富士山が活火山であることが改めて認識され、平成12年の北海道・有珠山や東京都・三宅島の噴火災害の記憶も新しかったこともあって、地元静岡県などで富士山の「火山ハザードマップ」の作成の機運が訪れた。
富士山の噴火は、首都圏一帯の被害も甚大であると推測されることから、内閣府等の関係機関が、富士山ハザードマップ検討委員会を設置した。一連の検討の中では、単にハザードマップを作成するだけではなく、防災対策の検討も進められ、いざという時の初動対応において、気象庁の火山情報を第一義とする考え方が示されたのが、平成18年、「富士山火山広域防災対策基本方針」としてとりまとめられた方針である。その後、この考え方は全国の火山を対象とした「噴火時等の避難に係る火山防災体制の指針」において明確化されるに至った。
これは、それまでの火山情報のうち、防災上重要な情報を法規的に明確に位置づけるものであるが、その基軸をなすのが「噴火警戒レベル」である。
すなわち、過去の噴火履歴などから想定される火山活動の噴火シナリオと火山ハザードマップを基に、関係機関が、平常時から常に災害の及ぶ範囲のイメージを共有して、避難や登山規制などの防災対応の開始時期を表す基準を共同で決定する。そして現在の状況がどのような火山活動の段階にあるかを24時間体制で監視している気象庁により「噴火警戒レベル」として公表するのである。
噴火警戒レベルとは、火山の噴火時に「警戒が必要な範囲」や「とるべき防災対応」を踏まえ、5段階区分とし、特段の防災対応が必要でない段階をレベル1、居住地に危険は及ばないが、登山に対する規制等が必要な段階をレベル2もしくは3(レベル2又は3は、地元関係機関による協議で事前に決定される)、居住地に危険が及び始める段階をレベル4又は5とし、レベル4は一般住人に避難準備行動が、災害時要援護者には避難行動が必要な段階とした。又、レベル5は、一般住人にも避難行動が必要な段階であるとする。


噴火警戒レベルマップ(資料:気象庁)

【御嶽山の被害は防げなかったのか】


1783年天明3年浅間山噴火絵図(資料:朝日グラフ)

≪浅間山・平成21年2月2日・人的被害なし≫
平成16年の噴火が終息して以降比較的静穏な活動で経過してきたが、平成20年7月頃から火山性地震が増加し始め、活動が活発化してきた。気象庁は、8月8日、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げると共に、地元自治体では登山の一部規制を敷いた。その2日後、8月10日から14日にかけて3回、極小規模な噴火が発生した。翌平成21年2月1日、さらに火山性地震が増加し、傾斜計が、山体が微動膨張する変化を示したことで、気象庁は、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げる噴火警報を発表した。それに応じるように、周辺自治体は浅間山への登山を全面禁止すると共に、火山に近い一般道路を全面通行止めにした。そして、翌日2日には、火口周辺に噴石を飛散する噴火が発生した(この噴火に際しては、前年から運用を開始していた降灰予報も発表され、ほぼ予報どおり、長野、群馬、埼玉県、東京都西部等に降灰が観測された)。
火山活動はその後次第に収まりを見せ、噴火警戒レベルは4月7日以降、順次引き下げられ、登山規制も緩和されていった。

≪霧島山新燃岳・平成23年1月26日・人的被害なし≫
平成23年に約300年ぶりのマグマ噴火が発生した霧島山(新燃岳)においては、平成19年に噴火警戒レベルの導入がなされていた。気象庁は、平成20年~22年の小規模噴火に際して噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。23年の最初の噴火は、地元自治体による自主的な登山規制が敷かれた中で発生し、1月26日からの噴火の拡大に応じて気象庁では噴火警戒レベルを3(入山規制)に引き上げると共に、「警戒が必要な範囲」を拡大する噴火警報を状況に応じて発表し、地元自治体も規制区域を順次拡大している。


新燃岳登山規制の看板(宮崎えびの市)

≪御嶽山・平成26年9月27日・死者不明者63名≫
平成26年9月27日午前11時53分頃、1回目の噴火を確認。同日12時36分気象庁地震火山部が御嶽山に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を発表。以下に本文を記す。
**(本文)**

  1. 火山活動の状況及び予報警報事項
    本日(27日)11時53分頃、御嶽山で噴火が発生しました。
    山頂火口の状況は視界不良のため不明ですが、中部地方整備局が設置している滝越カメラにより南側斜面を噴煙が流れ下り、3キロメートルを超えるのを観測しました。今後も居住地域の近くまで影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、山頂火口から4キロメートル程度の範囲では、噴火に伴う大きな噴石の飛散等に警戒してください。
  2. 対象市町村等
    以下の市町村では、火口周辺で入山規制などの警戒をしてください。
      長野県:王滝村、木曽町
      岐阜県:高山市、下呂市
  3. 防災上の警戒事項等
    火口から4キロメートル程度の範囲では大きな噴石の飛散等に警戒してください。
    風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。

<噴火警戒レベルを1(平常)から3(入山規制)に引上げ>

平成20年3月31日午前10時、気象庁は御嶽山に噴火警戒レベルを導入した。しかしながら、過去の経験や教訓が活かされない形となって、この度の大惨事を招いてしまったのは何故か。
新燃岳の火山活動においては、本格的なマグマ噴火に際しての、噴火規模の即時把握、降下火砕物(火山灰や小噴石)等に関する情報提供、地元自治体との連携などに課題を残したことが指摘されていた。現在、噴火規模の即時把握については、火山噴火予知連絡会で技術的な検討を開始し、降下火砕物に関する情報提供については、降灰予報の高度化に向けた検討会で検討が始まったところで、今回の御嶽山噴火においては、噴火予知が難しいとされる水蒸気爆発の可能性が気象庁の噴火警戒レベルに影響し、且つ本格的な登山シーズンを迎えていた地元自治体の入山規制判断の遅れにも繋がったのではないか、との指摘もある。


本格的な登山シーズンには渋滞も(イメージ)

【今後、最も危険な火山は…どこ?ここ?】
本稿の締めくくりに、タブーの領域に少しだけ踏み込もうと思う。一般国民は、今一番危ない火山はどこか?ということが知りたい。地震は何時頃起こるのか?津波の規模はどのくらいか?というのと同じ発想である。
しかし、気象庁をはじめ、関係機関は絶対に触れない領域である。科学技術の進歩が急速に進み、極端に難しい地震予知とは違って比較的表面兆候の捉えやすい火山活動において、おそらく現段階で最も危険をはらんでいる火山を指摘することは可能である。だが、火山活動は人間やコンピュータの予想通り変化するものではなく、地下深くのマグマ溜まりにどのタイミングで地下水が流れ込むか、又その量的規模など、肉眼での可視が不可能な地底内部の変化を予測出来ない。従って、観測域の範囲での火山性微動や地熱変化、表面上に表れる溶岩ドームなど、確実な材料を使っての予測範囲でしかない危険度ランク付けは、予想が外れたときの責任問題に発展することは当然であり、役人にとってこれほど危険な賭けは無いからである。
そこで、役人ではない筆者と、政府機関に雇用されていない火山学者の無責任な予想という断りを入れたうえで、タブーに挑戦することをお許し願い、現在において、レベル3以上の警戒を要する活火山を絞り込んでみる。

学問的なメカニズムの解明は別として、例えば北海道・有珠山は歴史上知られている7回の噴火すべてで、噴火前近くに有感地震が起きだしてから1~2日以内に噴火している。つまり経験的に噴火予知ができる火山なのである。又、年間に数百回の噴火をする鹿児島・桜島火山では、鹿児島大学による精密な観測網が敷かれているうえに、蓄積した経験も豊かなので噴火予知が成功している。しかし、これらとて数日前に判断を左右するデータが集積されるのであって、数週間、数か月前から予測できる科学的根拠は解明できていないのである。


毎日のように噴火を繰り返す桜島でさえ…(鹿児島市内から)

では、結論的に今最も危険な火山はどこかと言われれば、およそ科学の粋を集めて絞り込まれた47の火山の全てが危険であり、いつ大噴火を起こしても不思議ではないというふうに言わざるを得ない。読者にとっては落胆の纏めとなるのは承知だが、これから登山に向かわれる方々には、47火山の登頂はそれなりの覚悟と責任のうえで決行して頂く他ないのである。噴火警報レベルの導入は、得てして安全の物差しに利用されがちであるが、前述したとおり、絶対的なメカニズムの解明による予知ではなく、現況把握のうえに重ねた観測者達の経験値によってランク付けされているに過ぎないのであるから、そのレベルは火山活動の予測とはならないことを知っておくべきであろう。

<執筆日:2014.10/4>