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地方議員のお仕事とは?(靖国参拝する全国地方議員の会:イメージ)

東京都議の女性蔑視ヤジ問題や、兵庫県議の政務活動費疑惑による辞職が大きなニュースとなって列島を駆け巡った今夏。最近は各地域で県議、市議が刑事事件で検挙されるケースも続出し、7月16日には神奈川県議が議員辞職後に危険ドラッグ所持の薬事法違反容疑で逮捕された。奈良県でも葛城市議(逮捕後辞職)が児童買春・ポルノ禁止法違反などの罪で起訴され、山口市議が覚せい剤取締法違反(使用)容疑などで逮捕された。更に青森県平川市議会に至っては、市長選に絡む公職選挙法違反容疑で、議員20人のうち、なんと15人が逮捕されるなど、尋常ではない事件が地方議員を巡って噴出している。


志に職業や身分は関係ない、けれど(資料:京都新聞社)

ここにきてにわかに地方議員についての論議が沸き起こっている。地方公共団体の議会について、そもそも議員の存在価値はあるのか?とか、地方議員や首長選挙の在り方に至るまで、これまで殆ど住民の関心を惹かなかった事柄にまで世間の目が向き出している。折しも、来年は統一地方選挙の年。考えるきっかけは決して褒められることではないが、不祥事を喉元過ぎれば忘れ去る国民性にあって、今回はタイムリーであるが故、是非ともここで考えておかなければ、またぞろ不祥事は繰り返され、そのたびに不毛の議論と無責任な評論が飛び交うだけの国家ワイドショーに終始してしまうのは明らかだ。
今月のコラムでは、この国の法制度上、とても大事な地方公共団体と地方議会の仕組みを解析し、その中から来年の地方選挙における候補者の選び方のポイントを知ろうと思う。

【先ず、地方公共団体を知る】
我が国領土の一定地域を基に、その内部の住民を構成員としてその地域における政治・行政の権能を法律の規定によって保障されている団体を言い、別名で地方自治体と呼ばれる。

地方自治法§1-3、§8、§252-19、§252-22、§252-26-3
普通地方公共団体
※その組織、事務、権能等が一般的、普遍的なもの。
都道府県
市町村 指定都市
要件:人口50万以上の市のうちから政令で指定
中核市
要件:人口30万以上の市の申出に基づき政令で指定
特例市
要件:人口20万以上の市の申出に基づき政令で指定
その他の市
要件:人口5万以上ほか
町村
特別地方公共団体特別区
※大都市の一体性及び統一性の確保の観点から導入されている制度
地方公共団体の組合
財産区
地方開発事業団

※特定の目的のために設置されるもの
地方公共団体の種類(資料:総務省)

日本の地方公共団体は、憲法にその位置づけがなされている。日本国憲法第92条「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」により、地方自治法(昭和22年4月17日法律第67号)第1条において、「地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする」と規定する。
しかし、地方自治法においては、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(通称・地方分権一括法:平成11年7月16日法律第87号)が制定されるまで、国家の機関委任事務の規定として、「普通地方公共団体の長が国の機関として処理する行政事務については、普通地方公共団体の長は、都道府県にあっては主務大臣、市町村にあっては都道府県知事及び主務大臣の指揮監督を受ける」(150条)が存在していたため、実質的には国と地方公共団体は上下・主従関係に置かれていた。この法改正により機関委任事務は廃止され、国と地方公共団体の関係は「主従」の関係から「対等」の関係へと変わり、互いに協力するという概念が生まれたのである。

地方自治法では、地方公共団体の組織、運営、行政、財政から国との関係に至るまで、詳細な規定がなされている。それが故、国の法律によって地方自治が抑制されているという批判も多く、結果として地方分権の阻害要因であるとして改正を望む声もある。なお、地方自治の概念を定義するものとして最高裁判所は、「憲法が特に一章を設けて地方自治を保障するにいたった所以のものは、新憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となって処理する政治形態を保障せんとする趣旨」であるとし、この趣旨から憲法上の地方公共団体とは「単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみてもまた現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである」としている(最大判昭和38・3・27刑集17巻2号121頁)。


地方自治を実践する勉強?(イメージ)

【次に地方公共団体と国の違いを知る】
地方公共団体には議事機関として議会、執行機関として地方公共団体の長及び各委員会・委員が置かれる(地方自治法上の執行機関)。地方公共団体の組織は、議会を構成する議員と地方公共団体を代表する首長を共に住民が直接選挙で選出する二元代表制を執り、首長制或いは大統領制とも呼ばれる。
財政予算面から見た場合、国は一般歳出、地方交付税交付金等、国債費の三つに大別される予算措置で動いている。一般歳出の中には、専ら国の事務として行なわれる外交、防衛、年金等の他、国家的プロジェクトをはじめとする公共事業や、 医療、保健、福祉など社会保障に要する経費がある。これらは、国で直接実施されるものばかりでなく、負担金や補助金といった形で地方公共団体に交付され、最終的には地方公共団体を通じ、行政サービスとして供給されるものもある。
一方、地方公共団体では、住民により身近な存在として、福祉や教育、まちづくりをはじめ、生活に密接に関連する行政分野を中心に、地方公共団体間が共同して、或いはそれぞれの役割に応じて分担しながら仕事をしている。因みに、小・中学校の教職員の人件費や、警察に関する経費などは都道府県が、消防に関する経費などは市町村が負担している。

では、事業、行政サービスの面から見た場合はどうか。上述の予算措置においては、本来国の行政サービスであっても、物理的、地域的な問題から地方公共団体に委託されている事業は多い。それはそれとして、国が本来的に担っている事業とは、地方公共団体の目的である「住民の福祉の増進(地方自治法第1条の2第1項)」を達成するために、「国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割」であるとしている(地方自治法第1条の2第2項)。つまり、地方公共団体と国の存在意義は同義であり、目的は住民の福祉の増進であって、統治範囲の広狭による実施内容に役割分担を持たせているだけということになる。


国会議員と地方議員の違いはバッジだけ?(鈴木徽章工芸株式会社:提供)

【議員を知る】
国も地方公共団体も共に目的を同じくし、それぞれが役割を分担していると理解したなら、主権者(国民=住民)がその意思を託す議員がなすべき役割も自ずと明らかである。言わずもがな、議員とは議会の構成員を言う。憲法及び地方自治法、公職選挙法など法律上の定義は主として国会議員と地方議員を指す。本稿では地方議員にスポットを当て、その実情を理解することが目的であるが、そのためにも国会議員と地方議員の決定的な違いを挙げておく。
■国会議員
概要:
国民の直接選挙によって選ばれ、「国会」を構成する(憲法43条)。日本の国会は衆議院と参議院から構成される二院制をとっており、衆議院と参議院では被選挙権や任期などが異なる。両議院の独立を確保するため、憲法48条により、衆議院議員と参議院議員とを兼ねることが出来ない。議員定数については、公職選挙法に定めがある。
地位:
国民の代表(憲法43条)。
兼業兼任:
国会議員は、本来の職務に専念すべきであると定められており、国会法39条では法律の定めによる例外の他、国又は地方公共団体の公務員との兼職の禁止が定められている(例外:大臣、副大臣、政務官、特派大使、政府代表、日本学術会議員、皇室会議員などは公務員である)。
特権:
1)不逮捕特権…衆参両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない(憲法50条)。各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない(国会法33条)。
2)免責特権…議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われることはない(憲法51条)。
3)歳費特権…両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から歳費を受ける(憲法49条)。歳費や手当については国会法や国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律などの規定による(例:公設秘書や政策担当秘書の給与を国費負担、議員会館事務室や議員宿舎の提供、JR,航空機の一定条件下での無料利用など)。


特権というより特典?(資料:朝日新聞社)

■地方議員
概要:
都道府県・政令指定都市 - 市区町村・行政区などを単位とする中選挙区制・小選挙区制、それ以外の市区町村 - 自治体全地域を1区とする大選挙区制であり、その選挙区内に居住する住民(地方自治法:日本国民たる普通地方公共団体の住民)の直接選挙によって選出され、各地方議会(地方自治法89条)を構成する。議員定数は条例で定められる。
地位:
住民の代表(地方自治法17条)。
兼業兼任:
普通地方公共団体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができず、又、地方公共団体の議会の議員及び常勤の職員等と兼ねることができない(例:県議会の議員が、同一県内の市町村議会等の議員を兼ねるなど)。当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として当該普通地方公共団体に対し請負をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。ただし、ここでいう請負とは、民法上の請負のみならず、広く営業としてなされている経済的・営利的取引であって、一定期間にわたる継続的な取引関係に立つものを含むものと解される。従って、上記に類さない企業の従業員などは兼業が可能である。
特権:
特に規定された特権は保持しない。
ただし、最高裁判所は平成12年2月28日東京高裁平11(ネ)2724号 損害賠償請求控訴事件の判決を支持し、地方議員については免責特権が直接的に適用されることを否定しているが(例外的な憲法上の規定であるため、明文の対象を解釈で拡大しないという趣旨であり、あくまでも憲法上の規定が地方議員に直接適用されることはないという判断)、民主主義政治実現のために議員としての裁量に基づく発言の自由が確保されるべきことは、国会議員の場合と地方議会議員の場合とで本質的に異なるものとすべき根拠はないとして、概ね免責特権と同様の権利を運用上で認める傾向にある。

【地方議員の仕事、役目を知る】
国会議員と地方議員の役割、つまり仕事の違いは、地方公共団体と国の違いの章で触れたので、すでにおわかりだろう。国が為すべき外交、防衛、公共福祉などに係わる仕事は地方議員の職域ではないということだ。それ以外、地域ごとに異なる生活習慣等に合わせ、その地域の住民の福祉に寄与する仕事が地方議員の役目である。具体的には、地方自治法96条に列記されている事項が議会の構成員たる地方議員の仕事の主たる中身であり、行政に対するチェック機能を発揮させるための権限でもある。
同法96条を要約すれば、条例の制定・改廃、予算の決定と決算の認定、地方税の徴収、地方公共団体としての契約締結、財産の運用管理や、地方公共団体が当事者である審査請求その他不服申し立てや訴訟における和解、あっせん、調停、仲裁に関する対応等、議会に与えられた権限の実質的執行役が議員である。それらは前述した通り全て住民の福祉の増進に繋がる行為でなければならない。であるから、これらの議会活動を充実させるために行う地域活動(住民の意見集約など)と政治活動(住民の政治参加を促す活動など)が許される。

【良い地方議員を選ぶ方法を知る】
ここまで見てくれば、「地方議員」とは、どのような役目を負い、どのように仕事をすべき職責を担っているのかお分かりかと思う。従って、地方議員の選挙においては、短い選挙期間であっても、国会議員の選挙時に流される政見放送のような露出が無くとも、地方紙に掲載される候補者のプロフィールと抱負や、街頭演説などをつぶさに観察すれば、どの候補者が適任であるのかを選択することが出来る。はずである。ただし、選挙投票に出向いたからといって、必ず誰かに投票しなければならないのではない。選挙に白票を投じることも又、有権者の意思表示であり、権利であるからだ。棄権とは意味が異なる。少しでもマシな(言い方は悪いが)候補者を選ぶも又方法であるが。


地方議会、議員と行政、住民のつながり(資料:伊勢市)

では、本稿の最後に、地方議員選挙における候補者の適正診断方法は?を伝授しよう。
憲法は、国会に対し統一的な国家意思を形成するという役割を期待しているからこそ、国会議員を特定の選挙区の代表ではなく、全国民の代表としている。 一方で地方には、国では行き届かない事や地域に密着した事は地域住民こそが最も適切な判断主体であるから、地方政治を地域住民の手に委ねることにしたのである。だからこそ直接民主主義的制度を採り入れたと解すべきである。つまり、憲法が、このような統治構造を採用したには、国家に対峙する地方公共団体という構図をもって権力の分立を図り、その一方で、地方が国を補完して民主主義をより活性化するという関係を構築しようとしたものと考えられるのであるから、自ずと議員の仕事の目的は違ってくる。
結論として、地方議員候補者選出のポイントは、
1.地元の問題にどれだけ精通しているか(身近な行政問題を知っているか)
2.選挙区内の行政に対する影響力は発揮できるか(学歴よりも職歴を重視)
3.国レベルの大きな目標を語っていないか(役目を履き違えていないか)
など、先ずはこのポイントを最重点で選別すれば、今世間を賑わせているようなお人を選んでしまうようなことにはならないと思うのである。