トップページ > 2014年2月号 > マンスリー・トピックス


電子マネーとは違いますよ!(Ameba)

インターネットやIT技術の目覚ましい発達と共に、私たちが当然のように日々の暮らしの中で扱ってきた「お金」の革命が起こりつつある。

ほんの30年ほど前までは、お金と言えば現金。つまり、日本銀行発行の紙幣や造幣局発行の貨幣による決済手段が常套であり、国民皆、自由経済、資本主義経済の中で、その“札束”を巡って夢を追い、日夜働きづくめの毎日を送り、泣き、笑い、はたまた悲しい事件まで巻き起こしているのが今の世の中である。しかし、「お金」とは、物の交換価値のゲージを表すために人間が考案した便利な道具(引換券)の代名詞として存在し、庶民はその紙切れに、さも額面の価値が存在しているかのごとき、日銀券信仰に陥っている。

その後、日銀券の現物を使用しない決済方法が相次いで登場(クレジット、電子マネー)し、財布の中身は様変わりしてきたのであるが、現物の紙幣を使用しなくなったとは言え、交換価値の裏付けは政府発行の日本銀行券の信用性であることに何ら変わりは無い。
それが今、国家の信用のバロメータである「通貨」の概念を覆す勢いで新しい「お金」が流通し始めている。その正体とは。


これがビットコインだ!(ロイター)

【通貨…その信用と流通の仕組み】
先ずは、お金の本質のおさらいをしておこう。

『お金とはいったい何者なのか?』経済を知ろうとするとき、入り口として必ずくぐらなければならない論理です。「物と物との交換価値を媒介する手段としての通貨である」という説明は、単に外形的な説明に過ぎません。
まず、お金には信用が必要です。物々交換は、交換当事者が互いの所有物の価値を認め合う(等価)ところから始まります。しかし、通貨という便宜上の媒体が交換価値の流通を支えるためには、その媒体に安心感(信用)が必要となります。つまり、通貨を持っていれば、いつでも価値のあるものと換えてもらえる、という安心感です。では、換えてもらえる、というのは誰に対して抱くのかというと、社会的な集合体である国家です。人間は群れで行動する哺乳類ですから、その群れを統治するボスに信頼を置くわけで、“隣のおっちゃんが交換してくれるから”というわけにはいかないですよね。そうやって、日本の歴史においても中世史上の国家形成期から「通貨」という概念が受け入れられてきたのです。一方で信用を付与する国家側としては、通貨を発行する権限を担うとどうしても沢山の通貨を発行したくなります。国家財政が安定するからですね。無くなればどんどん発行する“打ち出の小槌”方式で、市場に通貨が溢れると、物が少なくなり、需要と供給のバランスが崩れます。これがインフレーションですね。猫も杓子も通貨を沢山持っている状態は、一見して皆が富裕層になったように思える反面、心理的な不安感(通貨が価値を有していない)から、交換価値が下がっていきます。そして、国家をも信用しなくなります。昔の人も現代と同じで、そのような価値の循環をちゃんと分かっていたんですね。国を統治するぐらいの人たちですからそんなバカなことはせず、発行する通貨の量をちゃんと決めていたんですね。当時は日本の国の中だけが市場ですから、現代のように国際的な通貨の基準は関係なく、もっと単純ですが、市場経済の原理として「通貨供給量」をコントロールしていたわけです。


小判はいくらでも作れるのじゃ(イメージ)

いわゆる「お金」は、その昔は交換価値そのものを持っていなければならず、誰もが必要と感じ、又希少価値もあり且つ一定の供給量を均衡のとれた品質で供給できるものとして、日本では稲、米、布などが用いられました。中国では貝、ヨーロッパなどでは石なんかも通貨として使用されていたことはご存知ですよね。「値段」という言葉の語源は、稲の「ね」からきているというのも納得ですね。やがてもっと流通性に優れた通貨として、「貨幣」が開発され、銅や銀、錫、金など鉱物が使われるようになります。特に金は希少価値に加え、劣化しない鉱物ですので、後に説明しますがつい最近まで通貨の交換価値の基準として採用されてきました(金本位制)。
~中略~
我が国の経済を語るときは、明治以降の近代日本のお金の歴史を知ることが必要となります。鎖国を解き、海外貿易が経済にとって非常に重要となりました。そのころの日本は、文明の近代化に必要な技術や資源は輸入に頼り、日本の伝統産業である繊維産業を中心として綿や絹を輸出します。このころの貿易決済手段は金と銀で、国際通貨はイギリスのポンドです。我が国は、銀本位制を敷いていたのですが、ヨーロッパでの銀の暴落(銀産出量の増加と銀貨放出)から始まった金貨の高騰に伴い、世界の潮流は次第に金本位制へと移行していくのです。

第二次世界大戦の真っ只中、1944年7月、アメリカのニューハンプシャー州、ブレトンウッズという小さな町に世界45カ国の金融担当の関係者が集まり会議を開きます。戦争が終わり、世界貿易が再開されたとき、お金の支払い(貿易決済)をどのようにするか、国際通貨をどうするかが話し合われました。太平洋戦争の最中、アメリカはすでに戦争後の世界経済の秩序について国際会議を開いていたのです。戦後の国際通貨体制のことを、この町の名にちなんで『ブレトンウッズ体制』と呼びます。ヨーロッパは第二次世界大戦により大きな被害を受けており、イギリスの力も衰えていましたので、アメリカが世界のリーダーとして台頭していました。この会議により、国際通貨はドルになり、ドルと他国通貨の交換レートや金本位制が確立されることになりました。具体的には、ドルの対金価格を金1オンス:35$とし、日本円は1$:360円となりました。


アメリカが世界の中心となった(イメージ)

こうしてアメリカが世界の金融の中心として君臨したわけですが、その栄華も1971年のニクソンショックで崩れ去ることになります。当時のアメリカ大統領であったニクソンは、長引くベトナム戦争でドルを大量に放出した結果、危機的な金不足に陥っていたため、ドルと金の交換停止を決断します。このとき、長く続いた金本位制は崩壊し、ドルは単なる紙切れ同然となりました。ドルの信用失墜を回避するために他国通貨の対ドルレートの見直し(スミソニアン協定・このときは1$:308円)なども行いましたが、世界の不安は解消されず、1973年世界の通貨はついに変動相場制へ移行したのです。これにより、お金は物と物との交換手段から「商品」になりました。
ラビットプレス+2013.05 次元の違う金融緩和対策【経済とお金の原則】


為替や株、金融市場は通貨の信用の上に成り立つ(イメージ)

各国が自国の経済に見合った量の貨幣を発行すること。これが現在の「管理通貨制度」である。管理通貨制度では、その国の政治や経済状況が貨幣の価値を決める。つまり、その国の「信用」によって、その国の貨幣の価値の安定、不安定が計られる。

【仮想通貨:ビットコインとは?】
ビットコインは、国籍正体不明の「サトシ・ナカモト(中本哲史)」なる人物が2008年11月、インターネット上に公開した論文(ビットコインP2P電子マネーシステム)をきっかけに、2010年にLaszlo Hanyecz氏がネット上でピザ2枚を1万BTC(ビットコイン1万枚)で購入したのが最初の決済だと言われている。
現在、海外のネット上ストアにはPCやデジタルカメラ、時計といった多彩な商品を揃えるビットコイン用の通販サイトがあり、アメリカではウォルマートやセブン-イレブンといったリアル店舗でも、eコマース(インターネット上での決済・電子商取引)で使用するためのビットコインを購入できるようになっている。

ビットコインはドルや円のように中央銀行や政府機関によって発行されるわけではなく、法的な裏付けもない。取引の正当性の確認は、mining(マイニング=採掘)と呼ばれる高度な計算作業を通じて行われ、同作業に参加した者・miner(マイナー=採掘者)には一定量のビットコインが交付される。コインの最大発行量はプログラムによって2,100万ビットコインと決められており、現在の貨幣のように管理通貨制度に基づき発行量が無制限という通貨ではない。イメージとしては、発行主体があるわけではなく、この地球上に一定量だけ存在する鉱物(金、プラチナなど)といったものに近い概念となっている。すなわち、金は中央銀行によって発行されるわけではなく、中央銀行や政府がその価値にお墨付きを与えるわけでもない。その価値は、世界中の誰もが「金には価値がある」と考えるから認められるもので、完全に市場の判断に委ねられている。更に、金の埋蔵量には限界があることもその価値を下支えしているのであるから、最大発行量の限界はそれと同じ意味を持つのである。


日本でも通貨経済は希少鉱物(金・銀・銅・すず等)本位制度であった(佐渡金山記念鉱)

【ビットコイン採掘狂騒曲】
一般的なデジタル通貨は、取引所で既存通貨とデジタル通貨を両替することで手に入れられるが、ビットコインの入手経路は、両替所だけではなく、自らの手で「採掘」することも可能である。ビットコインでは「miner」という特別なビットコイン"採掘"ソフトが流通量と発行時期に関する数理的問題を解決し、ビットコインを造り出す仕組みで、minerによる計算の結果で自動的に採掘数量を調整する。miner参加者が少なければ採掘は容易となり、多ければ計算処理に難易度が増す仕掛けで採掘に相当の時間を要するようにプログラムされている。又、初期にはCPUで演算処理をしていたが、より速い演算処理速度を求めてグラフィックボードが使われるようになり、発熱量の増大がminerにとっての大きな問題となっている。
※現在では、ビットコインmining専用チップ「asic」が開発され、より計算速度を高めつつ省電力化に寄与している他、プール採掘(採掘者はチームを結成してビットコインの採掘を協働し、自身の貢献度に応じてビットコインの分配を受けることができる)などの方法が採られるようになっている。


USBに埋め込まれた専用チップ(asic)

ビットコインを採掘している人(mining参加者)には、ネットワークを維持する見返りとして、ビットコインが与えられるという仕組みだが、miningには非常に強力なスペックのPCや専用チップを搭載するハードウェアが必要であり、膨大な演算経費や電気代は与えられるビットコインの市場価値では賄えないとも言われている。つまり、インフレを最小限に抑える仕組みが採られているというのだ(現在のビットコインネットワークは、自動的にmining(採掘)量を調整し、約10分毎に50枚のビットコインが採掘されるよう制限している)。


コインの採掘にはSCにも匹敵する演算処理能力が要求される。(イメージ・富士通)

ビットコインは、暗号化されたデジタル情報である。既存の通貨のようにコインや紙幣といった物質的貨幣ではない。その保管(銀行口座のような役割)や送受信(送金システム)には、ウォレットと呼ばれるフリーのソフトウェアが使われ、取引データはP2P(peer to peer:多数の端末間で通信を行う際のアーキテクチャのひとつで、対等の者(Peer、ピア)同士が通信をすることを特徴とする通信方式)と呼ばれる分散型ネットワークに記録される。ウォレット利用のために住所氏名などのプライバシー情報を開示する必要はなく、メールアドレスを登録すればよい。このため当局は個々人の取引状況を把握することができず、取引を強制的に停止したり、課税したりすることも難しくなる。更に、ビットコインは金融機関を通さずにインターネット上で取引されることから、既存通貨における「送金」に該当する作業が容易かつ短時間で完了するメリットがある。又、送金手数料に該当するコストが発生するが、金融機関で発生する送金手数料に比べ、格段に少額となり、且つ送金の際に発生したコストはビットコインで支払い、minerに配分される。


※資料:thepage.jp

【ビットコインバブル】
そのような特性が浸透し、一日当たりのビットコイン取引数は、2013年初め2~3万件であったものが、12月には7~9万件に増え、対ドル相場も流通し始めた当初は1セントに満たなかった額が、その後上昇を続け、1月には10ドル前後に到達。3月には財政危機に陥ったキプロス政府が銀行預金を封鎖し、預金への課税を検討すると発表されると、国家の管理下にないとされるビットコインに資金が流入(確実な証拠は未確認だが)し、価格は一挙に200ドル台に急上昇した。その後下落し、100ドル前後で推移したが、10月以降再び上昇に転じ、11月下旬にはついに1,000ドル、12月4日にはなんと1,200ドルを超えた。ビットコインユーザー数は、2014年1月初旬で100万人を突破し、昨年11月の高騰を受けて投機的な様相が加速しているようであるが、地球人口から見れば少数であり、価格が需給動向によって大きく上下動するのは避けられない。ましてやインターネット上でしか取引されないことから、需給動向の変化スピードは他の実物金融資産に比べ早いのも頷ける。ビットコインの価格上昇の主要因は、供給がminingを通じて緩やかにしか増加しない一方、需要は知名度の高まりとともに急激に増えたためだ。そうしたなか、中国人民銀行の通達(対ドル換算が1,200ドルを超えた翌日、同国内の金融機関に対してこのオンライン通貨を利用した金融サービスを禁止すると公式に発表)のように先行き不透明感を強める出来事が発生し、市場に不安が募れば、価格が急落するのも不思議ではない。


※資料:日本経済新聞

一方、ビットコインの普及が進めば、すでに一部で実施されている同通貨を用いた購買行為が広がりをみせ、関連インフラ需要が喚起され、取引所などといった関連事業も拡大することが期待される。
又、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、上院国土安全保障・政府問題委員会に宛てた書簡の中で、1995年にブラインダー元FRB副議長が行った議会証言を引用し、「(仮想通貨は)法執行や監督業務のリスクとなる可能性はあるが、その革新的発想が支払いシステムの迅速性や安全性、効率性の向上を促すならば、長期的展望を持てる分野もある」という指摘をした。更に同委員会は2013年11月、仮想通貨のリスクや保証などに関する公聴会を開催した。席上、委員長のカーパー上院議員は、メールやインターネットを例に出し、「当初は理解しがたい物だったが、今では様々な利便性をもたらしているのも事実」と発言、ビットコインを単なる異物として取扱うのではなく、次世代の金融業界のリーディング産業になり得る可能性を示したことにも注目する。

それらアメリカの政府関係者らの相次ぐ「ビットコイン肯定発言」により、ある種の信用力が付与されたと見るや、以前にも増して投機筋からのマネーが流入し、中国当局の思惑?や、否定的エコノミストの指摘とは逆に2014年に入り再びビットコインの相場は高騰している(2014年1月6日対ドルレートが1,000ドル/1bitを回復)。


ビットコイン決済可能をPRする店頭ステッカー(米・シリコンバレイ)

【ビットコインは通貨現行制度に革命をもたらすのか】
昨年のビットコインの値動きを説明する大きな資料として、非合法ドラッグや殺人依頼などをコンテンツとする世界的闇サイト「シルクロード」に代表されるマネーロンダリングの手段として大量に使われた節があるビットコインを巡り、その取引に準じた値動きが取り沙汰されたが、サイト運営の首謀者逮捕の一報後も、徐々に上昇機運を取り戻し、もはやそのような局所的な要因のみでの影響は薄いと言われ、すでにビットコインは世界的な投機筋による為替取引対象の域に入ってきた感がある。
もちろん、ビットコインのレートが反転したことが、その安全性を示している証拠にはならない。それは未だに疑惑の目が向けられている、ダークな経済圏だ。しかし、ビットコインの使用を認める企業は続々と増えている。台湾の金融当局がビットコインATMに懐疑的な見方を示し、アリババ傘下のECサイト「タオバオ」が今月14日よりビットコインの販売を停止するとしても、小さな企業やNPOがビットコインでの決済を認め始めている(企業広報の話題目的だとしても)ことは、日々当たり前のように届けられるニュースになりつつある。

アメリカのネット通販会社、オーバーストック・ドットコム(Overstock.com)が暗号化通貨(Crypto-currency)、ビットコインでの支払いを受け付け始めた。2014年1月11日がその初日であったが、決済処理(トランザクション)で840、取引総額13万ドルに及ぶ支払いが1日でなされたと発表され、同社のパトリック・バーンCEOは「驚いた」とツイート。更には、家電ネット販売のニューエッグ(Newegg)も近くビットコインでの支払いを受け付け始めるし、ソーシャル・ゲームの「ジンガ」もビットコインの採用を表明している。

そのような中、昨年の暮れ(2013年12月29日)に、又新しい仮想通貨が登場した。米下院の元議員で、大統領選挙にも出馬経験を持つロン・ポール氏が提唱してきた「金本位制度の復活」に掛けて、発行した「ロン・ポールコイン」がそれだ。注目は、その希少性。総量は210万枚と、ビットコインの10分の1。登場早々、2weekで現在流通しているとされる仮想通貨70数種のうち、49位(1月12日11:50m)に躍進している。

日本では、ビットコインを始め、仮想通貨に対する法整備が全く追い付いていない現状がある。すでにドイツのようにビットコインによる納税を認めている国も出てきてはいるが、1.発行体がない2.発行時の払い込みがない3.特定の資産による裏付けがないことで、既存の電子マネーとは大きく異なっているため、前払い式の電子マネーやプリペイドカードを取り扱う資金決済法の対象にならないし、犯罪収益移転防止法上の規制とは無縁である。仮想通貨による潜在的な問題をクリアにしていかなければならないのは自国の決済手段として認めるためには不可欠だが、それも大きな問題が露呈し、当局が真剣に対応を迫られてから見えてくるという話だ。


ビットコイン取引所では円との交換も可能であるが…(イメージ)

やはり、仮想通貨においてはアメリカを発信源とする。背景にはドルに対する通貨不安(米国内の金融システム不安)が潜在化しているのは否めない事実であろう。しかし、日本では依然として現金決済に重きを置く国民性と、日本銀行券に対する信頼性が高い現状では、一部のギ―ク(コンピュータやインターネット技術に時間を費やし、深い知識を有する者の意)以外、浸透するには幾つかのプロセスが必要であろう。とは言え、2014年は、世界的にも仮想通貨の動向に注目が集まる年になりそうである。