トップページ > 2014年1月号 > 女不動産屋 柳本美土里

女不動産屋 柳本美土里

小学校入学直前に英一の父と母が離婚し、母は実家に戻された。
父と母の離婚の原因は、父の同僚が母に横恋慕をしたことだった。
20代半ばの純粋だった母は、夫の友人を信じたことで隙を与えてしまったのだ。
同じく20代半ばの父は、母の落ち度に寛容な年齢にはなく、頭では母を責めることができないと理解していても、どうしても気持ちが許すことができないでいたのだ。
父は、妻と友人だと信じていた同僚とを同時に失い、失意を抱えて居たたまれなくなった会社も去った。

英一が小学校に入る頃には、父と二人きりの父子家庭となっていた。
今でこそ、母子家庭や父子家庭は珍しくなくなったが、その頃の小学校で片親しかいない家庭というのは、クラスで1人いるかいないかの時代だった。
祖父を早くに亡くした祖母の家が近くにあったのだから、一緒に住めばいいものの、母の出自を忌んだ祖母の反対を押し切って結婚した父は、数年で訪れた破綻を、それ見たことかと母から詰られるのを恐れ、崖の上に立つ小さな木造アパートに父子家庭を持った。
父は祖母が怖いのではなく、人から詰られるということが、どうしようもなく我慢ならない性格なのだ。それが、たとえ自分の母親でも。
そうした性格が災いしたのだろう、父が初めて社会人としてコネ入社を果たした大手ガス会社の事務職は1週間もたず、人との関わりが少ない仕事を転々とした。
英一が生まれ、物心ついた頃には、人と関わることが少ないトラックの運転の仕事をするようになっていた。
そうして仕事を移り変わった父の収入は、どうしても限られたものである。
毎月が月末の給料日を目指しての耐久レースだったのだろう、家に帰ってもほとんど1人でテレビを観て暮らしていた英一は、時々、電気を止められるのが悲しかった。

英一が、家に対しての思いが芽生えたのは、小学校の頃だ。
学校が終わると、友達の家に数人で押しかけ遊んだ。
門扉をくぐり玄関ドアを開けると、母親の「おかえり」という声とともに玄関で靴を脱ぎ、自分の部屋に友人たちを案内する。
しばらくすると、友達の母親がおやつを持ってやってきてくれるのだ。
時には手作りのケーキだったり、クッキーだったり。
押しかける家は頻度の違いはあったものの、基本的には順番に廻っていた。
それは、子供どうしで気を遣ってそうしていたのか、他の家にばかり邪魔することに気が引けた母親たちが、次は自分の家でと義務を果たそうとしたのかは判らない。
ただ、どの家でも決まったように、母親が家で子供の帰りを待っていて、部屋で遊んでしばらくするとおやつが出てくるのだ。

ある日、友達グループの中のひとりが、「英一の家に行ってみよう」と言い出した。
家のことをほとんど話をしない英一の、まだ見たことがない家に興味を持ったのか、それに賛同する友人も少なからずいた。
いつ建てられたかも判らない煤けた壁の木造アパート。
その4畳半ひと間の部屋で風呂無しトイレは共同が、英一親子の家だ。
「おかえり」と家で待ってくれる母親も居なければ、自分の部屋なんてものはひと間のアパートにあるわけもなく、手作りのおやつはどうあがいても出てこない。
英一は、友達を家に呼ぶことはできなかった。

母親が居ないことは淋しかったけれども、辛いと思ったことはなかった。
母親というものが口うるさいことは友達の毎日の愚痴から知っていたし、ひとりで夕食を食堂で食べていた英一は、自分の好きなものだけを食べられることに不満は無かった。
それに、夕食後はほとんど独りで家にいた英一は、「勉強しなさい」と叱られることもなく、いつまでも観ていることができるテレビがあれば淋しくもなかった。
腹が立つのは、周りの大人から「この子は不遇な家庭なのにグレもしないで偉いね」って言われることだ。
母親がいないことでグレることを正当化できるのなら、グレても非難されないはずだし、何の不利益も蒙らないはずだ。
でも、社会がそんなに甘いものではないことを、彼らに対する教師のまなざしから英一は知っていた。
コネも金も頼りない英一にとっては、勉学でのし上がることでしか、自分の生きていく路はないのだと、幼いながらも悟っていた。
成績がいいということで、さらに大人たちに褒められることになってしまったのだが。
周りの大人の無責任な褒め言葉や、情けありそうな言葉には、普通じゃない家庭だねって言われているようで、無性に腹が立ったが、気持ちが塞ぐことは無かった。
しかし、家に友達を呼べなかったことには、英一は、こたえた。
母親がいなくて不遇かどうかは、気持ちの持ちようだと思えたが、目の前にある家の違いという現実の貧しさには抗いようがなく、普通とは違うということを突きつけられたようだった。
父から貰える小遣いで好きなメンコや駄菓子は買えても、友達と同じような家は叶わない。
大きくなくてもいいから、友達を呼べるだけの広さと見た目が普通の家を、英一は欲しかった。そして、できれば学校から帰ったときに、迎えてくれる母親がいる普通の家庭も。
英一は、普通が欲しかったのだ。

倫子は、父親を見たことが無い。
正確に言うと、父だと言われる写真の中の男性は知っているのだが、父に実際に会った記憶は無かった。
倫子が赤ん坊の頃には、一緒にお風呂にも入れてくれていたらしいのだが・・・
父親は倫子が物心がつくまでに、交通事故で亡くなった。
その年は、例年になく雪の多い年だったそうだ。
滅多に雪が降らない都会でも、道路に雪が積もり、いたるところで渋滞が起きていた夜だった。
渋滞の街中を抜け、郊外に差し掛かった県道で、遅れを取り戻そうとしたトラックがスリップして、横断歩道で信号待ちをしていた父親に突っ込んできたのだ。
母親は30歳で未亡人となった。
保険会社に勤務していた父親は、若いのにも拘わらずしっかりと生命保険に入っていた。
加害者の車の保険からも、それ相当の補償がされた。
そのため、倫子たち母子は当面の経済的な不安を考える必要はなかった。
それでも、子供の成長にしたがって必要な資金、自分の老後までみれるほどの経済的保証が有るわけもなく、倫子が小学校に入ってからは、放課後に預かってくれる学童保育の助けを借りて、母親は仕事に出ることになった。
倫子にとって父親が必要だからという理由なのか、女として頼れる男性を求めたのか、たぶんその両方の理由からだろう、母親は倫子が小学校3年生の時に同じ職場の男性と再婚し、倫子の新しい父親になった。

倫子の母親は古い考えの女性だと言えよう。
子供には、父親と母親とが必要で、それがない家庭は普通じゃないと。
将来、倫子に好きな人ができて結婚を考えたときに、母子家庭ということが障害になると思っていた。
子供の幸せを考えない親はいない。
父親という欠けたピースを補い形を整えることが、娘の幸せに繋がることなのだと、母親は頑なに信じていた。
倫子は写真の中の父親しか知らなかった。
それでも、自分と同じように左目の下にほくろがあり、自分と同じ形の薄い唇の写真の中の男性は、紛れもなく血の繋がりを感じさせるものだった。
新しくやってきた父親。
倫子が欲しいと言えばどんなおもちゃも買ってくれたし、東京ディズニーランドにも毎年連れて行ってくれた。いつも穏やかな笑顔で倫子と遊んでくれた。
でも倫子にとっては、父親は写真の中の男性であり、目の前の優しい男性は母親の彼氏だったのだ。
形だけは他の友達の家庭と同じだけれども、自分を本気で叱ってくれない父親、子供の幸せを勝手に押し付ける母親のいる家よりも、学童保育の方がいくらかマシだと思っていた。

倫子が中学生の頃、母親と義父の間に弟ができた。
母親の母親としての愛情まで、弟に持っていかれたような気がした。
相変わらず義父は倫子にも優しかったが、倫子の目には義父の優しさは、弟に対する優しさとは異なった色に見えた。
自立して早く家を出たい、それが倫子の目標となった。
昨今では、中学を卒業したというだけでは、現実問題として就職することはできない。
義務教育と同じくらいの進学率となっている高校に進み、卒業と同時に就職して家を出ようと考えていた。
だとしても、高校でかなりいい成績と内申がなければ、高卒の就職でまともなところは無いということも倫子は知っていた。
内申書にひびくような目立った行動はしない、勉強も頑張って成績を上位に保つ、そうしたことで目標に近づくことなのだと、倫子は思っていた。


社会人になってから順風満帆に歩んでいたはずの英一の人生の歯車がずれたのは、今から思えば投資用のワンルームマンションを購入したことだったのだろう。
英一は高校を卒業すると同時に家を飛び出し、住み込みの新聞販売店で働きながら奨学金を貰い、地方の国立大学を卒業した。
保険会社に就職を果たした後は、持ち前の頑張りで数年も経つと、上司に認められ、部下に頼られる存在となっていた。
プライベートの面でも、辛い子供時代を過ごした共感からなのか、会社の後輩の倫子と2年間交際した後に結婚し、仕事は忙しかったが英一には幸せな日々が訪れていた。
ある土曜日の昼下がり、社宅で寛いでいる英一のもとに電話が鳴った。
「初めまして、司地所の遠藤と申します。西条さん、ワンルームマンション投資にご興味ありませんか?」
遠藤の話では、ローンを組んでワンルームを購入し賃貸に出し、入居者から入ってくる賃料に月々2~3万円程度を加えてローン返済に充てれば、ワンルームマンションのオーナーになれるというものだ。
「どうですか?中古物件ですが、その分お安いですし、既に入居者が入っていて毎月賃料が入ってきます。ローンの大半は入居者が払ってくれるようなもんですから、ご負担は月々僅かでオーナーになれるんですよ。マンションが値上がりしたら売って値上がり益が儲かりますし、値上がりしなくてもローンが完済されれば、年金がわりに毎月収入が入ってくるって仕組みです。いい話でしょう?」
確かにいい話だ、と、英一は思った。

不動産バブルの頂点で持ちかけられた話、これまで右肩上がりに値上がりし続けていた不動産や給料を思うと、値下がりしたら?とか、空室になったら?とかを考えることが現実的ではないように思えたのだ。
それにも増して、「不動産のオーナー」という言葉に惹かれたのかもしれない。
家は借りるものだった英一の人生の中で、所有すること、貸す立場に立てることができるということは、貧しい立場からの逆転を意味するように思えたのだ。
それでも、自分の家を買うという夢を果たすためにしている僅かな積立貯金を吐き出さないとワンルームマンションのオーナーにはなれないのだとしたら、躊躇していたのかもしれない。
「お手持ち金は、要りません。物件のお値段とともに購入の諸費用も信販会社が融資してくれますので」
その言葉に、英一は購入を決心した。

英一がワンルームマンションを購入することに、倫子は反対しなかった。
「月々の持ち出しも、その分借入金が減っていくのだから、僕たちのマンションを買うための貯金をしているのと同じだよ」
入居者が出て行って空室になったとしても、働いていた時代に貯めた貯金もあるし、数ヶ月ならなんとかなるだろう、上手くいけば、英一が言うように自分たちの部屋を購入する役に立つかもしれない。
将来生まれてくる子供とともに、温かい家庭を築く、倫子の夢は現実に近づいていると思えた。

子供を宿してからは、倫子は新聞の折込チラシや住宅情報誌をチェックすることが日常になっていた。
「ねえ、このマンションどう?駅から15分だったら歩けない距離じゃないし、24時間ゴミが出せる集積所があるんだって、これって便利よね。どう思う?」
倫子は、英一のように持ち家志向が強かったわけではなかった。
給料から社宅の賃料は差し引かれているが、このあたりの賃貸相場と比べて極端に安く、本来ならば住居費に充てられるはずのものは、貯金に回すことが出来る、その点では良かったのだが・・・
「西条さん、明日は部長の奥様がお買い物に行かれるから御伴するのよ」
三船課長の奥さんにしてみれば、自分ひとりで御伴するより、倫子を一緒に連れて行く方が何かと便利なのだろう。
上司の奥さんからの誘いや申し出を断ることは、英一の会社での立場を悪くするかもしれない。
会社での上下関係が、社宅内にも持ち込まれることが倫子には我慢ならなかった。
妊娠が判ってからは、あまり無理な付き合いはお断りするようにしたが、上司の奥方連中は寛容な人たちばかりではない。
「妊娠で体調が悪いんじゃなくて、それを理由に付き合いを拒んでるだけじゃないの?」とか、「私たちの頃は、少々のことがあっても人付き合いは大切にしたもんだけど」なんて陰口がどこからともなく耳に入るのだ。
早く社宅を出たい、無理をしてお腹の中の子供に万一のことがあったら取り返しがつかない。

「ねえ、今度の週末のモデルルーム見学コースに、このマンションも入れようよ」
借り物でない自分の家に暮らすことを目標に生きてきた英一も、急にマンション購入に積極的になった倫子に、少し気後れを感じ、貯蓄の額もまだ乏しいようにも思えたが、目の前まで来た夢が現実に変わっていく段階を楽しんでいた。
モデルルームに通いを始めて3ヶ月。
「これまで見た中で、ここが1番いいんじゃない?目の前に公園もあるし、駅まで歩けるし、子供を育てていくにはいい環境だと思うけど」
倫子はすっかり気に入ってしまった。
英一も悪くないと思えた。これで、子供の頃からの夢がかなう。
思っていた金額よりも少し高かったが、なんとかローンを組むこともできるようなので、二人はこのマンションの購入を決めた。

マンションでの生活は、倫子にとって快適なようだった。
時々廊下で出会う隣人に挨拶をする程度のもので、社宅に住んでいたときのように、しがらみのある近所づきあいをする必要もなく、お互いのことを知らなくても何の不自由もないことに自由を感じていたようだ。
元気な男の子を産み、大した病気もせずにすくすく育ったことも、母親としての安心を実感させていたのだろう。
英一にしても、社宅に比べると会社からは遠くなったものの、ドアツードアで1時間足らずの通勤は、さほど苦労を感じる距離ではない。
借り物でない自分の家に住み、「お帰りなさい」と妻の出迎えでマンションに帰る。
やっと人並みになれたような気がした。
その頃は、そう思っていた。

マンションを購入して6年目に入り、住宅ローンの支払いが3割近くアップした。
そうした段階的に支払い額が変わる住宅ローンだということを、借入の際に聞かされていた記憶は僅かにあるが、あの頃は給料が毎年のように上がっていたし、6年目には当然給料も増え、そのくらいの支払いは楽にできるだろうということだった。
そんなこと、誰が保証してくれるのだろう?
自分自身も妻の倫子も、不動産会社の営業マンも銀行の担当者も、右肩上がりの所得を信じていたのだろうか?
みんなが信じていた、騙そうなんて誰ひとり思っていなかっただろうが、その保証は誰もしてくれないということを購入から6年目になって気付いた。
平成バブルが崩壊してから給与は据え置かれ、ボーナスは毎年のように減る一方だった。
住宅ローンの支払いが増えて、英一の家計は苦しくなったが、それでもなんとか持ちこたえていた。
それが、持ちこたえられなくなったきっかけは、投資用に買ったワンルームマンションの入居者が退去してからだ。
入居者からの賃料に月々2~3万円程度の上乗せでローン支払いができ、オーナーになれ、将来は年金がわりになるということで買った部屋の、購入時に住んでいた入居者は購入後すぐに解約して退去し、入居者を募集するために賃料の値下げを強いられた。
入居者が入れ替わるごとに、改装費用や募集費用がかかり、賃料は下がっていった。
住宅ローンの支払いが増えた後にワンルームマンションの方が空室になった。
つまりは、住宅ローンとワンルームマンションのローンが圧し掛かり、ついに英一の給料では賄いきれなくなった。
子供を幼稚園に預けて妻の倫子は働きだしたが、幼稚園の保育料や教材費を支払うと、手元に残るのはほんの僅かだ。
英一の方も、給与やボーナスだけでなく、残業代も会社のコストカットのために経営側から厳しく管理されるようになり、元々アルバイトも禁止の会社のため、英一の所得を増やすことはできなかった。

保険会社勤務の英一にとって、金融機関からの督促が会社に掛かってくることが、どういうことなのか充分判っていた。
営業でもない同僚宛に個人名で頻繁に掛かってきていた馬鹿丁寧な電話が、どういった内容なのかは口には出さないものの同僚の誰もが知っており、噂が広がり支社長の耳に入って間もなく、彼は遠方の支社に飛ばされたのだ。
絶対にローンの支払いを滞らせることはできない。英一は、どうあがいても支払いに窮した月末に消費者金融の機械の前に座った。
消費者金融の窓口に行き、審査をされて金を借りるのは、とても抵抗があったが、機械で全てが完結するということなので、少しは気が楽だった。
ワンルームマンションの入居者が決まり、景気が回復してボーナスが増えれば、消費者金融への返済はそう難しくはないようにも思えたのだ。
しかし、ここでも英一の見通しは完全に外れた。
既にユニットバスとトイレが一緒になった古いタイプのワンルームマンションに入居者はなかなか現われず、景気が回復することもなかった。
消費者金融のカードと借入額だけが増えていった。

「ローン返済のためにサラ金で借りる。そんなことをいつまでも続けることができないのは目に見えていたでしょう?」
柳本不動産で美土里は英一を叱った。
このままでは「自己破産」。そう思った時に思い出したのが、かつて友人の曽谷の実家が差押えされ、それをうまく処理してくれたという不動産屋さんのことだった。
英一は、柳本不動産に相談を持ちかけたのだ。

「それで、奥さんには、サラ金での借入のことは言ってるの?」
「いえ、彼女にそんなこと言えなくて・・・まだ・・・」
英一は小さくなって俯いた。
「そうよね、必死になって今の生活を守ろうとしている奥さんの気持ちを考えたら、なかなか言い出し辛いわよね」
美土里は大きくため息をついた。
「状況は、だいたい判ったわ。このままの状態では、どこかの借入が滞納して会社へ督促されるのは時間の問題のようね」
「まずは、サラ金に対しては過払い請求をしなさい。多分、金利の過払い状態になっていると思うから請求して、過払い分を還付請求することね。知り合いの司法書士を紹介するから安心して。この件で、会社にサラ金から直接電話が掛かってくることはないわ」
「次に、ワンルームマンションについては任意売却しましょう。いくら入居者がついたからといって、持ち出しが必要なことに変わりないし、空室となった場合にはさらに負担が増えるんだから。この信販会社なら、こちらから申し出て連絡をきちんと取るようにして任意売却後の返済を継続していれば、会社にまで電話を掛けてくることはないでしょうから」
「自宅マンションについては・・・これだけは死守したいのね」
「そうねえ、自宅マンションの住宅ローンについては、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)からしか借りてないから、返済額の見直しの申請をしてみましょう。西条さんのように、景気が悪くなって給料が減り、返済が出来なくなる人が増えたせいで、機構も返済について柔軟に対応しようということなんでしょう、審査もあるから返済額の見直しができるかどうかは判らないけど、やってみる価値はありそうね」
「最終的に月々の支払いがどれくらいになるかは、信販会社との交渉や住宅ローンの返済額の見直しが通るかどうかによるけど、きっと今より改善されると思うから、一緒に頑張っていきましょう」

それにしても、自分が求めていた家とは何だったのだろうか?
通常に住宅ローンが払えている間は自分の家と思えていたものが、一旦、ローンが返せなくなると、取り上げられて他人のものになってしまう。
それでも、倫子と子供の不安を膨らませないためにも、なんとか家は守りたい。
英一は、美土里の提案の先に希望の光を見出し、なんとかなりそうな気がした。(完)

※このドラマはフィクションであり、実在の団体や個人とは何の関係もありませんので、ご承知ください。